PVD

PVD(Physical Vapor Deposition:物理的気相成長)に関するコンパクトな説明です。

PVD(Physical Vapor deposition)は物理的気相成長と訳されますが、アルゴンガスを磁場放電によってイオン化して加速させターゲットと呼ぶ金属板にぶつけてそこから金属原子を叩き出させて反対側に置かれたウエハに成膜させるものです。スパッタとも言いますがスパッタ(Spatter)とは焚き火などでパチパチと音を立てて弾ける様なイメージです。昔からあるこなれた成膜プロセスの一種です。半導体プロセスの中では珍しく安定していてパーティクル(ゴミ)の発生も少なく安心して使えるものです!
図1はPVD装置の概略です。ベース圧力は10-7Pa台で半導体製造装置としては最高の真空レベルです。残ガスがあると膜質に強く影響してしまいます。例えば酸素や水蒸気があると膜中に取り込まれ酸化されたりしてしまいますので配線などでは抵抗が上がったり、結晶化がうまくゆかず膜質が悪化したり、配線がすぐ断線したりと色々いたずらします。真空度は厳密に管理されなくてはなりません。真空チャンバーへはアルゴンガス、N2等が導入されクライオポンプで排気されます。上部にはターゲットと呼ばれる金属の板が取り付けられていて放電によって発生したアルゴンプラスイオンが電界で引きつけられでターゲットに激しく衝突します。金属原子はターゲットから弾き出され反対側に置かれたウエハに付着し膜へ成長します。ウエハはペディスタルという台座に置かれますが、下部には加熱源がありプロセス中は常温から高温まで加熱されます。またアルゴンガスをウエハ裏面に導入し熱伝導と熱均一性を良くしています。これをアルゴンチャックと言いますが半導体ではよく使われる手法です。加熱温度は膜のストレスや結晶を決める重要な要素なっています。プラズマ放電を効率よく起こさせるため永久磁石がターゲットの裏側に配置されていてモータで駆動されています。磁場アシストによりプラズマは強化されスパッタレートが向上し量産性が上がります。マグネトロンスパッタと呼ばれています。装置は高真空を扱うため大型化しています。

図1-PVD装置概要(原理)

図1-PVD装置概要(原理)

よく見かける装置はクラスターツールと呼ばれる宇宙ステーションのような格好をしています。トランスファチャンバを中心にプロセスチャンバが接続されています。手前のカセットロードロックチャンバからロボットがウエハを搬送してゆきます。こうしておくとウエハが奥のチャンバに搬送されるにつれ真空度が高くなってゆきますのでプロセスチャンバまで来ると最高真空度でプロセスが行われることになります。また複合膜を連続して付けられることや多種プロセスへ対応可能であることの理由で多くの装置メーカーが取り入れているデザインです。

図2-クラスターツール

図2-クラスターツール

シリコン面へスパッタする場合には注意が必要です。シリコン面には空気中の酸素、水蒸気と反応してできた自然酸化膜(Native oxide)が付いています。室温なので数ナノ程度と薄く弱い膜なのですが絶縁膜ですから抵抗増大などの問題があります。PVDで成膜する前に除去しなければなりません。CF4やアルゴンガスによるエッチングでシリコン面の自然酸化膜を除去するプレクリーンチャンバー(前処理)も装置に組み込まれています。
図3ではデバイス中でのPVDとCVD膜の使用箇所を示してあります。ここ数年のトレンドとしてCVD膜の応用が広まってきましたが、PVDは古くからあるこなれたプロセスでありゴミの発生や副生成物が無く、膜質も良好でターゲットを換えることで膜種を変更できるなど多くの利点があり今でも多く使われております。配線への応用が多いのですが、特に低温で行う必要がある絶縁膜を付けたりするプロセスもあります。

図3-PVDプロセス適応ヶ所例

図3-PVDプロセス適応ヶ所例

バリア層(バリアレイヤー)とは障壁用の膜ということです。図3中ではTiNがバリア層ですがWプラグCVDの時、CVDガスであるWF6が分解してできるFが下地のシリコンと反応してエッチングしてしまいます-虫食い状にシリコンがエッチングされるのでワームホール(虫の穴)と呼びます(写真1)。シリコンがエッチングされるとコンタクトに悪影響を及ぼしますので、反応を起こさせないためバイア層でFの進入を防いでいます。

写真1-シリコンへのワームホール

写真1-シリコンへのワームホール

アルミの場合も下地がシリコンの場合には反応してシリコンを吸い上げてしまいます。吸い上げられたシリコンの所は三角形に空洞ができますのでアルミスパイクと呼んでいます(写真2)。この場合もアルミとシリコンの間にバリア層が必要です。接着層はアドヒジョンレイヤーとも言います。膜はPVDにせよCVDにせよストレスを持っています。中にはストレスが強すぎて膜との相性が悪く剥がれてしまうものもあります。CVDタングステンなどが一例ですがそのままではデポジションできない場合に間に仲立ちをする膜を入れる場合があります。TiNは酸化膜SiO2ともCVDタングステンとも接着しますので接着層として多用されます。

写真1-アルミスパイク

写真2-アルミスパイク

反射防止膜(アンチリフレクションレイヤー)はフォトリソ工程で膜からの反射が強すぎる場合に用いられます。反射を抑えてレジストがオーバー露光にならないようにしています。特にアルミ配線では反射を起こし易いのでTiNなどをアルミ膜の上に成膜しています(写真3)。配線はEM(エレクトロマイグレーション)対策やコンタクト、VIAへの接続要求から多層になっていることが多くプロセス的には連続成膜が要求されます。副生成物やゴミ発生の面からはCVDよりPVDの方が有利なようです。

写真3-反射によるレジスト変形

写真3-反射によるレジスト変形

ターゲットから飛んできた金属原子は構造体の上で少し移動してからお互いにくっ付きあって膜に成長してゆきます。この時のエネルギーと基板の温度が膜質に影響してきます。バーベキューの時、鉄板を熱くしておいてから水をかけると水が小さな玉になってあちこち動き回りますが、あれと似ています。鉄板の温度が低いときは水は緩やかに流れるだけです。成膜も似ていてアルゴンガス圧力と温度の関数で、低圧で高温である程、金属原子は互いに結合し強い結晶へ成長します(針状結晶から柱状結晶へ)。結晶が強いと電流を多く流しても金属原子が移動して配線が切れてしまうと言う、所謂エレクトロマイグレーションを起こし難くなります(砂つぶから岩へ成長したようなものです)。プロセスエンジニアは出来るだけ強い結晶の金属膜をデポジションさせようとします。マグネトロンスパッタはエネルギーが高く強い膜ができます。金属膜が構造体上にどのように付くかはステップカバレッジというもので評価されます。段差被覆性と言います。図4はコンタクトホールでのステップカバレッジを表したものです。コンタクトの開いていない平面は付き易く、通常ここをステップカバレッジ100%とします。それに比べコンタクト底部は少ししか膜が付きません、ボトムカバレッジと言います。

図4-ステップカバレッジ

図4-ステップカバレッジ

コンタクト側面へも余り付きません。またコンタクトの間口は斜めから飛んでくる金属原子によって厚めに成膜します。このまま続けると間口が塞がってしまいそれ以上金属が中に入らなくなります。この現象をピンチオフと言い、出来た空洞をボイドと呼んでいます(図5)。一般にアルミなどの軽金属は直進性がないのでボトムカバレッジは良くなくピンチオフし易いものです。タングステンなどの重い金属は直進性がでるのでコンタクト底面などへも比較的よく成膜します。

図5-ボイド

図5-ボイド

ターゲットはマグネトロンプラズマでスパッタされますから磁場の強いところ程スパッタ作用が強くでます。使用後のターゲットを見てみますとエロージョンという現象が観察されます-図6、写真4参照。このエロージョンにより斜め成分の原子が飛び出ますからコンタクト側面へのスパッターができます。

図6-エロージョンの概念

図6-エロージョンの概念

写真4-ターゲットのエロージョン右

写真4-ターゲットのエロージョン右

写真6-ターゲットのエロージョン

写真5-ターゲットのエロージョン

PVDはよく原理的に垂直成分が主であるためトップカバレッジはよく、斜め方向には成膜しないと思われがちですが、このエロージョンによってターゲットから少し斜め成分の方向をもった金属原子がスパッタされて飛び出してきますのでコンタクト側壁や開口部にも成膜します(図4参照)。
この斜め成分が無いとサイドカバレッジはゼロになりコンタクト内で配線は作られなくなります。いわゆる断線になってしまします。

直進性を良くする目的でロングスロースパッタというものがあります。ターゲットとウエハ間を広げて金属原子の飛距離を長くして直進成分をなるべく利用しようとする試みです(図5)。しかしながら当然成膜レートは落ちます。

図5-Long through sputteringの概念

図5-Long through sputteringの概念

Cu配線などではメッキの前にシードレイヤーと言って電気を流すための金属膜を付けますが微細なコンタクトなどへは通常のPVDでは成膜できませんのでIMP(イオンメタルPVD)という装置が開発されました。構造的には図6のようで、ターゲットと下部ペディスタル間に第二のターゲットとでも言うべき電極を配置し、ここでプラズマを発生させます。ターゲットから叩き出された金属原子は中性ですが、プラズマを通過する間にプラスに帯電します。これをバイアス電源で引っ張ってウエハに引き寄せ直進性を持たせるものです。金属成膜の分野で古くからある技術でしたが、半導体で再び脚光を浴びました。いずれにせよ斜め成分が全くゼロでは側面へ成膜できませんので両者の兼ね合いでプロセスは作られています。

図6-IMPの原理

図6-IMPの原理

PVDは別項にあるCVDに比べステップカバレッジが良くありません。物理的に金属原子を叩き出すことで成膜させているためです。特にアルミは軽金属で綿をちぎって小さな穴へ投げ込むようなものです。穴の中には余り入りません。そこで高温にして流し込もうと言うアイデアが出てきました。高温アルミという技術です(図7)。通常のアルミPVDでは埋め込めないような小さなコンタクトやバイアへ高温にしたアルミを流し込みフィリングします。そのため下地のバリア層膜はチタンのようなアルミが流れ易いようなものを使用します。高温アルミは大きな開口のものは逆に出来ませんので、小さいことを逆手に取ったプロセスです。ただし何百万個という穴全てに100%埋め込む技術は大変困難なものです。アルミは高温にすると結晶が大きく成長します。ちょうど小さな砂粒が集まって大きな岩を作るようなものです。EM耐性も向上しますが強くなった分エッチングはし難くなります。

図7-Hot Aluminium

図7-Hot Aluminium

最後に、信頼性は殆どが配線で決まります。FEOLでの問題は余りありません。トランジスタの様な素子はシリコンで出来ていますので石のようなものです。配線には気の遠くなる数のコンタクト、バイアがあり配線が接続されています。接続箇所は全て十分低抵抗で信頼性良く接続されている必要があります。配線も電流を流してから抵抗が上昇したり切れて断線しないよう強くしないといけませんEM(エレクトロマイグレーションと言いますが)。EMエ対策のためPVDは厳密な管理を要求されます。真空度が悪い状態で成膜したものはEMが持たずお客様へ出荷してからトラブルを起こしたりもします。エロージョンの具合は刻一刻と変わりますので斜め成分も変わります。それにつれカバレッジも変化しデバイスへの影響も変わってきます。いつターゲットを交換したらよいか、デバイス毎にスペックが違い何時もエンジニアを悩ませます。

PVDの致命的欠点は微細化へ不向きということでしょう。比較のため表にPVDとCVDの特性を載せておきました。PVDの欠点はCVDの優位な点となっています。まだまだ有利な点も多く数々の延命策が考えられておりIMPやロングスローなどもその例です。カバレッジはさすがにCVDに譲るところです写真(6)。

写真6-PVD(左)とCVD(右)のカバレッジ比較

写真6-PVD(左)とCVD(右)のカバレッジ比較

最後にPVDとCVDのプロセス比較表を載せておきます。微細化には何かとCVD有利と言われますが、PVDはこなれたプロセスで安定しており適材適所で今後も使われてゆくものと思われます。

表1-PVDとCVD比較表

表1-PVDとCVD比較表

 

 

 

 

 

 

 

 

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