CMP

CMP(Chemical Mechanical Polish)は化学機械研磨と訳されますが、簡単に言うと運動エネルギーアシスト化学的研磨です。Cu(銅)配線のダマシンプロセスやプラグ埋め込みなどが注目されがちですが、ステッパー(露光機)の焦点深度DOF改善の為も見落としてはいけません。ここではCMPの工程をコンパクトに解説してみましょう。

いきなりですがCMPは図6に示したような構成になっていて、パッドという回転円盤にスラリという研磨剤を垂らしてヘッドに取り付けられたウエハに力を与えながら表面を削ってゆくものです。パッドは回転のみですがヘッドはウエハを裏向きに保持しながら回転すると同時にパッドの上を円を描きながら移動します。主に均一性を上げるためです。よくヤスリで削るイメージを持ちがちですが、実際は運動エネルギー補助の化学エッチングに近いものです。

図1-CMPの構成

図1-CMPの構成

図2はCMPのエッチングメカニズムを示しています。スラリはパッドとヘッドの回転運動によりウエハ上の段差面に衝突します。図で平坦な部分には余り力を及ぼしませんが段差で肩になっている部分には激しく衝突して力を及ぼします。運動エネルギーは肩の部分で強く現れますので微小ながら熱を発生させ、この熱が化学反応を促進します。結果、段差の部分は他の部分より選択的にエッチングされ全体として平坦化されることになります。

図2-CMP平坦化のメカニズム

図2-CMP平坦化のメカニズム

SiO2などの酸化膜にはPH11程度のアルカリ系のスラリーを用います。タングステンなどの金属にはPH2程度の酸系のスラリーを用い金属表面を酸化させ、酸化膜の状態にしてから削ります。その他運動エネルギーを効率的に伝えるため微小なヒュームドシリカやセリア、金属用ではアルミナなどが添加されています。スラリーのメーカーとしてはCabot社やRodel社があります。CMPはグローバルプラナリゼェーション(平坦化)の手法に用います。デバイス上の広い範囲(この場合はウエハ全体ということになります)を平坦化します。一方一部分のみ平坦化する場合をローカルプラナリゼーション(局所的平坦化)と言っています。Low-K材料のSOG、SODなどはデバイスの凹に流し込んで局所的に平坦化します。CMPが登場したのは10年以上も前のことですが、大きな理由の一つは微細化による露光装置の焦点深度低下が上げられます。フォトリソの回でも説明しましたが、解像度を上げるためNAの大きなレンズを使うと逆に焦点深度が浅くなってしまうという現象が現れます。いわゆるピントの合う範囲が狭くなってしまいます(図3参照)。

図3-段差とDOE

図3-段差とDOE

デバイスは色々な構造体を積み重ねて作り上げますから、プロセスを重ねる毎に段差を持ってきます(写真1参照)。

写真1-デバイス上の段差例

写真1-デバイス上の段差例

デバイスの段差は焦点深度内であることが絶対条件です。大まかに言って0.25ミクロンデザインルール以前にはBPSGによるリフローでのグローバル平坦化、SOG、SODなどによるローカル平坦化でしのいできましたが0.25ミクロンデバイスを境としてこれらの平坦化ではカバーしきれない状態になりました。CMPは露光機の焦点深度の問題を見事にクリアしました(写真2参照)。

写真2-CMP後の平坦化例

写真2-CMP後の平坦化例

CMPの応用は段差の解消(グローバル平坦化)ですが、他にも魅力的な応用がいくつかあります。STI(Shallow Trench Isolation)はシリコンに溝を掘ってから酸化膜を埋め込んで素子分離を行うプロセスでLOCOS(Local Oxidation of Silicon)に代わって微細化に対応したものです(図4)。LOCOSはこなれたプロセスですが、熱酸化膜をシリコンの酸化で作るため、際横方向の酸化が押さえられず、いわゆるエンクローチメントが生じてしまいます。微細化に伴い寸法の制御が困難になってきました。またLOCOSではシリコン表面からの段差を持ちますからパターニング時に露光機の焦点深度の問題が出てきます。STIではエッチングで溝を作ってから酸化膜をCVDで埋め込みますから制御性の問題はクリアしますしシリコン面からの段差を持ちません。

図4-STI

図4-STI

STIのプロセスを図5に示します。

図4-STIフロー

図5-STIフロー

シリコンウエハに熱酸化膜(SiO2)を成長させその上に窒化膜(ナイトライド)をデポジションします。窒化膜はCMPのストッパー膜です。熱酸化膜は窒化膜とシリコンが熱膨張の違いにより剥がれないようにするためと、直接窒化膜を付けるとシリコンに悪影響を及ぼすために仲立ちとして入れています。フォトレジスト(PR)をマスクとしてドライエッチングで溝を掘ります。次に溝の内側へ熱酸化膜を成長させます。これは次のCVD酸化膜を埋め込む際のインシュレータになります。CVDでの酸化膜は品質が劣る場合が考えられますので、まず熱酸化膜でキャップをしようと言う考えです。埋め込んだCVD膜を窒化膜をストッパーとしてCMPで削ります。CMP後、窒化膜と熱酸化膜をウエットエッチングで除去して完成です。実際にはドライエッチング工程でシリコン中にダメージが発生して結晶欠陥になったり、CMPでの均一な削り込みが出来なかったりする問題があります。シリコンはトランジスタなどが作られる重要な部分で汚染を相当気を付けなくてはなりません。またマイクロスクラッチといってCMPによる引っかき傷が発生することもあります。CMPは原理的には運動エネルギーアシスト化学エッチングですが、実際には半接触エッチングでありパッド表面の状態でスクラッチが生じます。スクラッチが深い溝状になれば構造体は破壊されますのでスクラップ行きということになります。

CMPの問題点としてはこの他に段差部の所で薄く削れるThinningや皿の様な形なってしまうDishingという現象があります(図6)。

図6-Dishing/Thinning

図6-Dishing/Thinning

CMPはヤスリの様なイメージを持たれると思いますが元々運動エネルギーアシスト化学エッチングであり特性上盛り上がって肩になった部分を選択的に削り落とします。逆にこれがないとグローバル平坦化はできません。しかしなるべく軽減したいので装置メーカー各社では色々な工夫をしています。よく行われる方法はウエハを保持するデッドの構造や弾力性のある材質を用いるものです。一部のメーカーでは空気バネを用いたヘッドも開発されています。パッドは表面がザラザラしておりスラリーに運動エネルギーを与える役目を持ちますが研磨中に磨耗しますから一定時間毎に交換しなくてはなりません。また毎回表面状態が変化しますので研磨速度に差が出てきてしまいます。このため研舞終了時か研磨の途中でコンデショナーと呼ばれるアームが出て来てパッドの表面を元のように戻します。アームの先端にはモータで回転するダイヤモンドがいくつか付いていてパッドを擦りケバ立たせている感じです(図7)。この辺りは各社色々とアイデアを出しています。

図7-CMPメカ機構

図7-CMPメカ機構

次に終点検出ですがレーザー干渉計をつかったものが実用化されています。パッドの一部に窓を開けて裏側からレーザー光を当てて干渉光を計ろうと言うものです(図8)。シリコン酸化膜SiO2を削るCMPではシリコンナイトライド膜SiNを一般にストッパー膜としています。シリコンナイトライド膜は削り難いためです。レーザーの反射光を使った終点検出器では両膜の境で光の反射が大きく変わってきますから検出は容易です。シリコン酸化膜SiO2だけのエッチングでは干渉の山数をカウントするため少し面倒で困難でもあります。何か終点を検出するための膜を埋め込んでおくことも手法として上げられます。

図9-終点検出機構

図8-終点検出機構

次はコンタクトやバイアプラグプロセスです。微細化に伴いコンタクトやバイア径は小さくなりPVDでは金属を埋め込むことが4困難になります。CVDはガスと接触する部分の表面反応ですから、ガスが回り込む所には成膜します。写真3はCVD-Wの例です。タングステンは微細な穴にもカバレッジ100%近く埋め込みできますが、抵抗が高いためコンタクトやバイアホールの中にだけ使用して他はアルミなどの配線を用います。このためコンタクトやバイアホールの中にタングステンが埋め込まれた構造となりプラグプロセスと呼んでいます。ドライエッチバックで同様のプロセスを行っていますが制御性が悪くまたエッチング残り(残渣という)が発生し易いため面倒なものです。CMPは一気に削ってしまいますので残渣が発生し難く平坦化にも寄与します。ただしCMPに負荷が掛かり過ぎるためパッドの摩耗が激しく交換作業や消耗品が多いためコストパフォーマンスは低下します。このため途中までドライエッチングによるエッチバックを行い、最後の仕上げをCMPで行うという手法も行われています。

写真3-コンタクトプラグ

写真3-コンタクトプラグ

Cu配線ではCMPは必須です。Cuはドライエッチングが殆どできません。CMPのような研磨によって加工します。ダマシン(Damascene)プロセスとして知られていますが、ダマシンとはダマスカス細工のことで映画のアラビアのロレンスではないですが成人した男性が持つ短剣に施された彫金です。作り方が似ていることから名づけられたようです。
図9にデュアルダマシンプロセスのイメージを示しました。デュアルとは配線とコンタクトやバイアホールを同時に作りこむことで、いくつかの方法がありますがここでは配線用の溝を作ってからコンタクトやバイアホールを開けています。溝や穴を消えせいしたらCuの拡散を防ぐバリア層を付けます。Cuはシリコン中だけでなくシリコン酸化膜(SiO2)中も拡散して汚染源になりますから厄介です。Cuは電気メッキで成膜させますが、メッキの欠点は導電性でないとメッキできないということです。そこでバリア層の上にシード膜(Seed layer:種という意味)を成膜して電気を流してメッキします。溝からはみ出たCuはCMPで削って完成です。

図10-ダマシンプロセス例

図9-ダマシンプロセス例

平坦化も同時に行われ層間絶縁膜の中に埋め込まれた構造となります。ダマシン法によらない配線は層間絶縁膜の上に横たわった構造をしていて、その上に次の層間絶縁膜が成膜されます。この方法では次のCVDでカバレッジの良いことが要求されます。配線と配線間は埋め込み特性が良くないとボイドと呼ぶ空洞が生じて信頼性に影響します。ダマシン法では一旦平坦化して次のCVD膜を付けますのでこのような問題は生じません。信頼性の点からも優れた方法と言えますがその分工程は複雑になります。以上、見てきました様にCMPは微細化には必須のものであり、他の組み合わせとしては埋め込み性からPVDスパッタ法よりCVDメタルへ、ポーラスなLow-K膜などの新素材などが上げられ総合的評価開発が進められています。また膨大なスラリー消費を抑えるためと消耗品の削減から純水を用いたCMPなどが研究されています。

 

 

 

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