自動制御

自動制御

1:初めに
今日身の回りにある機械の殆どで自動制御と呼ばれる技術が使われています。コタツ、冷蔵庫やエアコンの温度コントロール、モータや工場の中の様々な機械も自動制御で動いています。身近な技術ですが、いざ勉強するとなると敷居が高くどこから始めてよいか迷ってしまいます。このArticleは主に、半導体関連の仕事に従事する人のために書いたものですが、自動制御の基礎を分かり易く書いたつもりですので、他の分野の方々にも役に立つと思います。自動制御とは一言で言うなら“ある目標値なるように制御対象をコントロールする”ものです。第1章では自動制御の概要を述べています。次に制御方法で現在主流のPID制御方式を説明します。具体的な実習でより深く学びたい方には、簡単な自動制御回路の作り方を載せてありますので是非チャレンジしてみてください。実習を行うことで、より深く理解できるようになります。

2:目次
1章  自動制御とは
2章 自動制御の種類
2-1 ON-OFF制御から比例制御へ P制御(比例制御)
2-2 I制御(積分制御)
2-3 D制御(微分制御)
2-4 PI & PID 制御
2-5 制御の最適化
3章 制御対象-応答特性
4章 ディジタル制御
5章 制御回路
6章 参考実習の手引
温度コントローラの製作
モータードライブ回路の製作

第1章-自動制御とは:
自動制御とはある目標値なるように制御対象(装置など)をコントロールするものです。一般的にはコタツの温度制御を連想すればようでしょう。図1は一昔前のオン-オフ方式の自動制御系です。今はマイコン(マイクロコントロール制御)が使われています。温度によりバイメタルと言う2種の金属でできたセンサーが変形しスイッチをオン-オフさせるようになっていてダイアルでスイッチの接点間隔を変えて温度をコントロールします。簡単な制御ですが自動制御を理解する上での重要な要素が全て入っています。一般的な制御系は下図1の様になっていますが閉ループ制御系といいます。自動制御のミソはこの部分にあり、温度を測定しその値を戻して設定温度と比較します。設定温度より低かったら加熱を続け、高かったら加熱を止めます。図1ではバイメタルの変形で温度を測っていますので一種のスイッチ付き温度センサーです。設定温度と現在の温度を比較する部分は専門用語で加え合わせ点と言います。そして実際にヒーターをオン-オフする信号を作りだしますがこの部分は制御部と言い実際に加熱するヒーターは操作部と言います。

図1-温度自動制御

ここで自動制御に用いる専門用語は一見すると難解なものが多いのですが、言っている内容はそんなに難しくありません。具体的な例で用語を見て行きましょう。より一般的な制御系は下図2の様になっていますが、前にも述べた様に閉ループ制御系といいます。ここでは半導体装置の一種ファーネス(加熱炉)を取り上げます。自動制御で設定値(目標値)はSV(Setting Variable)といいます。制御するものは制御対象と呼ばれ、例ではファーネス(加熱炉)の温度になります。制御対象の温度は状態はセンサーで計測します。検出部がそれにあたります。検出された温度などの値は測定値PV(Process Variable)と言います。この両方の値が比較されますが、その部分は加え合わせ点と言います。そこで設定値から測定値を引いて差を計算します。この差を偏差(Deviation),または誤差e(Error)と言います。この偏差信号が次の操作部におくられ制御する信号が作られます。次の操作部では送られてきた制御信号により操作量を作り出します。温度制御の場合にはSSR(Silicon Controlled Rectifier)などの半導体素子によりヒーター電力を制御しています。操作量とはこの場合ヒータへの電力(電流など)ですがMV(Manipulated Variable)と言います。図では操作部出力Y=MVとして表しています。

図2-自動制御システム

用語のまとめ:
偏差e=設定値-測定値(E=SV-PV)、偏差は誤差eとも表します。
SV:設定値
PV:プロセス値
MV:操作量
e:偏差(またはDeviation)

次に温度制御を例に自動制御の応答性について考えます。水などを加熱した場合の温度変化は一般に図3のようになります。ヒーターがオンし加熱が始まってても直ぐには温度は上昇しません。あるじかんLだけ遅れてから温度が徐々に上がってゆきます。このL(sec)をむだ時間と言います。

図3-一般的な応答

時間の経過と共に温度は上昇を続けやがて飽和して一定温度になります。加熱と放熱がバランスして温度が一定になりこれを平衡温度と呼びます。平衡温度に達するまでが動特性と言われる領域でその後は静特性の領域に入ります。平衡温度の所から水平に線を延ばします。また動特性の立ち上がり部分に接線を引き時間軸と交わった所をa、平衡温度と交わった所(c点)から垂直に線を下ろすとb点が求まります。
a点からb点までの時間を時定数T(sec)と定義します。時定数Tは加熱する物質によって異なり、自動制御では重要なファクターとなります。

用語のまとめ:

L=ムダ時間(sec)
T=時定数(sec) =(最終値の63%になるまでの時間)

またμはこの場合ヒーター電源になります。
ここでk/μは静特性を表すものでゲイン定数と呼ばれKは定数です。

ゲイン定数

これに対しむだ時間Lや時定数Tは動特性と呼ばれます。

図4-応答特性

また制御対象によっては図4上のような応答をする場合があります。用語の定義としてオーバーシュート(行き過ぎ)、アンダーシュート(足りな過ぎ)、いつまでも安定せず振動を起こしてしまうハンチングなどがあります。
図4下はオフセット(残留偏差)といい設定値と恒常的な差ができてしまいそこで安定してしまいます。一般的な制御方式ではオフセットは出てしまうものですが、オフセットをキャンセルする手法があります。
自動制御に求められる要素としては(図5)

図5-応答性

1)応答性:設定値にすばやくもってゆく。
2)安定性:オーバーシュート、
アンダーシュート、
ハンチングなどが無い。
3)オフセットが無い。などですが1)の応答性と2)の安定性はトレードオフの関係にあり一般に応答性を上げると安定性が悪くなり、その逆に安定性を求めると応答性が悪くなります。

2章-自動制御の種類:
この章では自動制御の種類について解説してゆきます。始めに第1章でふれたオン-オフ制御から見て行きます。

2-1 オン-オフ制御から(P)比例制御へ

オン-オフ制御は一番簡単な制御方式で一昔前までは色々なところに応用されていました。現在ではマイコン制御に取って代わられました。オン-オフ制御では一般に設定値にならずその上下を行ったり来たりする振動-オーバーシュート、アンダーシュート(ハンチング現象)を起こしてしまいます。コタツの温度制御などで、精度を要求されない場合には、これでも問題ありません。オン-オフ制御では調節感度と呼ぶ範囲を設けて、この間でスイッチを入れたり切ったりしています。

図6-ON-OFF制御

それでは精度を上げて設定値にするためにこの調節感度の幅を狭め細かく制御すればうまく行くように思えます。バイメタルではなく電子回路によってなら精密な制御ができるでしょうか。

図7-ON-OFF制御の感度を上げる

図7はウンドウコンパレータと言う電子回路でOPアンプ(オペアンプと読みます)2個で作られています。詳しい動作は省略しますが、両コンパレータに上限と下限の値を設定しこの間に制御対象の温度などが入るように加熱と冷却を行います。調整感度を狭くしても結果はやはり同じで振動を繰り返しピタリと設定値にはなりません。

理由は制御対象の応答で、この場合は温度の変化には時間的な遅れがあるためです。加熱しても直ぐには反応しないため、加熱し過ぎになりオーバーシューを起こします。すると今度は冷却しても直ぐには温度が下がらないため、冷却し過ぎでアンダーシュートしてしまいます。

P制御-比例制御

そこで考えられたのが比例制御方式というものです。これは設定値SV測定値PVとの差、すなわち誤差E(偏差)を制御信号として用いるやり方です。誤差eが大きいほど操作出力MVを大きくし、小さい時は小さくし誤差Eに比例させようと言うものです。これは理に適ったやり方でやり過ぎによるオーバーシュートを防止できそうです。操作出力MVが誤差eに比例するので英語の比例にあたるProportionalの頭文字を取ってP(比例)制御方式と呼んでいます。図8に比例制御のブロック図を示します。

図8-比例制御

図9-比例制御(電子回路)

ここからは電子回路で説明します。
図9で電子回路では増幅器(アンプ)は三角形で表します。三角形で示したアンプの左側が入力で右側が出力です。
増幅度はAで表しますが図の例で増幅度AはKとしておきます。従って偏差eはK倍されてKEとなって出力されます。これが操作量MVとして使われます。具体的にはヒーターの電力をコントロールするサイリスタのオン-オフ信号になります。自動制御ではKを比例感度と呼びます。特に比例制御の比例感度であることを表す場合にはKpとします。次にMVのとり方ですが、図9に示すように設定値に中に比例帯Pb(Proportional Band)と呼ぶ領域を設けます。この比例帯の中で誤差Eに比例した操作量MVを作る訳です。図9の例では設定値SVが比例帯Pbの中心にあり温度制御の場合には通常加熱50%、冷却50%の割合で制御されます。今、測定値PVとの温度差が2℃だとすると比例帯の傾きから加熱割合は70%、冷却は30%で制御されることが分かります。比例帯のマイナス外側では100%加熱、プラス外側では100%冷却で制御されます。操作量MVは次式で示されます。 Moは偏差ゼロの時の操作量で通常50%にとられます。

図10-1 MV式

図9の例での操作量MVの計算式は次の通りです。

比MV=-100/10 × -2 + 50=70

例帯が10℃、誤差eがマイナス2℃、m0は通常50%です。式に当てはめると70%となります。ここで式の係数に当たる部分が-100/Pbになっているのは逆動作を意味し加熱しながら温度を制御する場合を意味します。この係数部分が前に述べました比例感度Kpそのものです。
精度よく制御するためには比例帯Pbの幅が重要です。図10-2のように幅をa、b,cのように狭くしてゆくと温度変化に敏感に反応しますから精度が上がりオフセットも小さくなります。しかし極端に狭く取ると過剰に反応し設定値の上下を行ったり来たりするハンチング現象を起こしてしまします。一般に比例帯Pbを広くすると制御系は安定し、狭くすると不安定になります。

図10-2比例感度のとり方

これらの関係を図11に示します。

図11 比例制御

比例帯の取り方には様々あり図12に例を示します。
Aは加熱して温度を制御する場合に用います。通常この取り方が多いようです。Bは温度を冷却しながら制御する場合、Cは加熱源と冷却源がある場合で両者の領域をどうするかでオーバーラップ、不感帯を設けるなどの例です。

図12-比例帯のとり方

図13-連続操作量

実際にSSRやサイリスタなどのパワー素子に操作信号を送り電力を制御し操作量を作り出しますが制御の方法には大きく分けて2通りあります。1つは連続制御動作で水量調整ではバルブの開度で水量を制御するようなものです。温度制御ではヒーターへの電流を制御する場合などです。これに対し時間比例動作制御と言う方式もあります。これはバルブの開度は同じですが開け閉め時間で水量を制御する場合に相当します。温度制御ではヒーターへの電流は同じにして通電時間を変える方式になります。これは総してPWM(Plus Width Moderation )パルス幅制御と呼びます。

図14-2 PWM制御

PWM制御は一定時間Tを決めておいてその中でオン-オフの割合を調整して制御するものです(図14-1参照)。全時間Tに対するオンの割合をヂューディ比と呼びます。
デューティ比

図14-2 PWM制御

他にオン-オフの周波数fを変える方式のPFM(Plus Frequency Moderation)もあります。こちらは弁の開閉スピードで水量を制御するのに似ています。
P制御は偏差eが大きい時(設定値と現在値が離れている)は大きな制御信号で制御し、余り離れていない場合(目標値に近い)は小さな操作信号を出力しますから、オン-オフ制御よりは精密なコントロールができます。
しかし絶対に “制御量は設定値とピタリ一致はしません”。これはどうしてかと言うと、 1つには操作出力信号と実際の温度や圧力上昇の間には必ず “遅れ要素” があるからです。操作信号を出してから効果が現れるまでに時間が掛かるので、“やり過ぎ、やり足りない”が必ず発生してしまいます! 2つ目はオフセット(残留偏差)を増幅して操作量として-これが定常状態として安定した状態になってしまいます。これを解消するために考え出されてのが次に取り上げる積分制御(I制御)です。

図15-比例制御のオフセット

図16-比例制御のオフセット

ここで、比例制御がどうしてオフセットが生じてしまうのかを水位の制御の場合で見てみます。図16は積分要素を含んだ場合の水位制御の例です。積分要素とは難しい用語ですが、積分とは加え合わせる=足し算と言う意味です。図16の例では筒の底からポンプで常に一定流量を排水しているものです。この場合、水位の設定値はSVでバルブ開度を制御しています。実際の水位はPVで筒の中に浮かべた浮子でバルブを制御しています。比例定数KPはテコの比でb/aになります。この例はトイレの水タンクや大型クーラーの冷却塔の水位調整などで見られます。排水量はポンプで決まっていますので常に一定で設定値SVは測定値PVに一致し設定値を変えてもオフセットは生じません。ポンプではなくただの穴だったら、水位によって流れ出す水の量は変わることは直ぐに分かります。水位が高い場合には水圧が大きいので、流れる水の量は多いでしょう。積分要素とは足し算効果ですから、水位によって流量が変わると言うことです。温度制御の場合、高温では温度の放散が大きく、逆に低い場合には放散も低くなるものです。これを非線形性(ノンリニア)と言います。

図17-非直線性

こんどは図17の様に、筒の底にパイプを設置してそこから水を排出する場合には、排出量は水位によって変わります。水位が高い場合には排出量が多くなります。また少ない場合には少なくなり一定ではありません。これを非線形特性(ノンリニア特性)と言います。従って設定値SVと測定値PVには必ずオフセットが生じてしまいます。やり過ぎ、やり足りない状態で水の流入-排出がバランスしてしまうためです。制御対象は一般的に非線形特性なので比例制御方式ではオフセットをゼロにすくことは出来ません。

そのため一昔前のコントローラにはオフセットバランスというツマミが付いていてオフセットをキャンセルするようにしていました(図18参照)。

図18-オフセットバランス

つまり手動で“ゲタをはかせて”あげる方法です。今は余り見なくなりましたが、古いコントローラには付いているかもしれません。しかしこれも、1点でしか合いません。設定値SVを変える度に、オフセットバランス値も変えなくてはなりません。結局、目標値になるように設定値の方を変更しているのと同じことです。

図19-オフセットバランス

そこで、”自動でゲタをはかせる”行う方法が考えられました。それが積分制御です。

2-2: I制御(積分制御)

図20-積分制御

オフセットバランスによってオフセットをキャンセルしても1点でしか設定値SVに一致しません。設定値SVを変えるとまたオフセットが生じてしまいます。再度オフセットバランスを調整しなくてはなりません。そこで図20の様に仕掛けを用意します。バルブを動かすレバーをもう一つ用意します。レバーの片方に水を溜める水槽をつけてポンプで水を入れたり出したりできるようにしておきます。設定値PVと測定値PVの差であるオフセットの信号を取り出し増幅しポンプで水をレバーに付けた水槽に出し入れします。オフセットがある限りポンプで水を水槽に入れ続け、レバーが連動してバルブを持ち上げます。オフセットが無くなった所で、ポンプは停止し、バランスが取れレバーは固定されます。これは次に述べる積分制御方式になりますが、積分とは結局は足し算の事で、小さなオフセット信号を足し算し大きな制御信号にすることです。学問的に表現すれば、制御対象に与えられる操作量Mの変化の速さ(例えばヒーター電力などの上昇の速さ、減少の速さなど)が偏差eに比例するものを“積分(I:Integration)制御”と言います。
操作量MV=Yとおくと 操作量MVの変化の割合が動作信号に比例しますから次式で示すようになります。

積分式

Kは定数になり積分であることを表すためにTiと書きます。Tiの単位は秒(sec)になります。
積分のイメージが湧かない場合は積分=足し算と考えてください。小さなオフセットを時間と共に足し合わせて行って大きな操作量MVを作り制御信号にすることです。比例制御Pはオフセットをそのまま増幅して操作量MVにしていますが、積分制御Iは足し算して操作量MVにしている点です。

図22-積分動作

図で示すと左(図22)のようになりますが、偏差eがあるかぎりこれを足し合わせて大きな操作量として出力します。オフセットがゼロになるとそこで積分は終わり一定の操作量を出し続けます。ヒーターへの加熱はそのまま続けらて、バルブの開度はそこで保持されます。これによりオフセットの問題は解決しました!

図23-積分回路出力

電気記号で積分を表すと図22下側のようになります。ミラー積分器と言いますが、キャパシタCに電気を蓄えて積分(足し算)回路にしています。一定の値の入力と出力の関係は図23右に示したようになります。入力がある限り足し算されて行きます。
比例定数Kは時間の単位を持ったTiで、昔のコントローラにはPと書いてあるダイヤルがあったものです。ちょっとしたコントロールには比例Pと積分I制御が付いていて、通常はこれで十分です。しかし、半導体のCVDやエッチングでは、プロセスガスのコントロールが必要で、高速性が要求されます。積分制御はいわば、じわっと制御するものです。従って急な制御は不得意です。
積分(I)制御ではオフセットをゼロ(キャンセル)にすることができました。しかし何かの作用で突然温度が下がったなどには応答が遅くなってしまいます。それは積分特性の図22、23を見ても分かるように応答が遅くなるためです。制御を乱すものを外乱(Disturb)と言いますが、例えば冷却中に冷蔵庫の扉を開けた場合などです。内部の温度は急激に変化しますから直ぐに温度制御が必要になります。積分制御では外乱などが入った場合など、急激な変化には対応できない欠点があります。

2-3: D制御(微分制御):

これを補うため微分(D)制御(Differential)が考えられました。これは偏差信号の時間微分に比例した操作量MVを出力するものです。 微分ですから少ない変化でも出力は大きくすることができ外乱に対応することができます。微分が馴染めない場合には引き算と考えてください。微分は割り算のイメージですが、割り算は引き算の繰り返しですので時間的に前の信号と今の信号を引き算して差を出し、それに比例した操作量MVを作るということです。

図24-微分制御概念

電気回路では微分回路は図25のようになります。増幅器の入力にキャパシタCが入っています。キャパシタは直流(DC)は通しません、交流(AC)のみ通します。直流とは変化の無い電流や電圧ですからキャパシタを通れず出力されません。一方交流は変化のある電流や電圧ですのでキャパシタを通って出力されます。キャパシタは周波数の高いもの、すなわち変化の速いもの程よく通しますので微分回路に用いられます。

図25-微分制御回路

操作量MV=Yとして微分式で表すとつぎのようになります。-RCを微分を表すdをつけて係数Tdで表します。係数Tdの単位が秒(sec)になります。しかし微分を余り強くすると微分キックと言う急峻な制御になってしまいます。

2-4: PI(比例積分)制御とPID(比例積分微分)制御

実際には図26の様に比例+積分+微分制御を組み合わせて使います。

P制御が基本
I制御でオフセットをキャンセル
D制御は外乱など急激な制御を必要とする場合

図26-PID制御

図27-PID制御

2-5 制御の最適化:

実際にはPIまたはPIDを制御してハンチングが無く、外乱に対しても適切に制御でき安定した制御を確保するよう調整します。

図28-PIDの諸問題

制御系の最適化はプロセスに与える影響が大きく常に問題となります。一般には系の安定性を重視すると応答は悪くなり、応答を良くしようとすれば安定性が悪くなります。

1.外乱が入った場合定常状態に戻る時間の長短の問題(セティングタイム)
2.オーバーシュート、ピークタイムの長短の問題
3.オフセットエラーの問題
4.振幅減衰比の問題

図29-最適化

最適化手法にはいくつかあります。現在はディジタル制御が主流ですので、ユーザーが意識して最適化する機会は無くなってきました。ここでは考え方を学んでおくことにします。原理が分かっていれば応用もきき、新しいトラブルにも対応できます。

ステップ応答法:
実際に設定温度に達するまでの応答曲線を描かせて無駄時間Lと時定数Tを割り出します。次に下に示した各制御方式による計算式に当てはめ、定数を求めます。一番基本的な方法でステップ応答法といいます。

図30-ステップ応答法

臨界限度法:

図31-臨界限度法

ステップ応答法は現場で行った経験があります。最初の設定では有効で、その後は制御具合を見ながら、微調整しました。臨界限度法や1/4感度法は実際に試してみたことはありません。
そのうちに実験して見ようと考えていましたが、機会が無いままディジタル制御になってしまいました。機会がありましたら、今度はマイコンで制御プログラムを作ってみたいと思います。

3 制御対象-応答特性:

お前は何者?制御対象を知る-オートチューンのお話し:

現在の制御装置(コントローラ)の中には制御すべき対象が未知の場合には自分で押したり、揺すったりして応答を調べ、最適なPIDを自分で求めるものもあります。
ロボット制御に用いるサーボアンプの中にパラメータ設定があり自動的にゲインを調整します。PLC制御では指令器(位置決め指令器が置かれ、サーボアンプとのインターフェイスをとります。
ロボット搬送装置では通常次の3つのパラメータが設定されます。
① 位置制御ゲイン
② 速度制御ゲイン
③ 速度積分補償

* ロボット制御では微分制御は通常行いません-振動するからです。
制御対象の性質から自動でPIDの最適定数を求めるには対象物に力を加えてその応答(反応)を見ます。温度なら温度変化を圧力なら圧力変を、またモーター電流などもよいモニターになります。洗濯機の例で、最初に少し選択槽を回してみて重さを計り、それから水の適量を計算して無駄のない洗濯をするのに似ています。

図33-応答法

色々な方法がありますが1つ目はパルス応答法と言うもので対象物にパルス状の力を与えてその応答を見ます。超音波ソナーやスイカを指で弾いてその熟れ具合を調べるのに似ています。比較的反応の速い対象物向きです。

ランプ応答法は序々に力を加えてその応答を調べるものです。右上がりでの入力はランプ入力と言います。***************************************************************************************************************************************************************************************

図34-ステップ応答

ステップ応答法は最もポピュラーなものです。図34のようにステップ状の入力から応答をみます。
実際の温度制御などで用いられる手法です。小型のコントローラでオートチューンなどと呼ばれているものです。

周波数応答法は図35のような正弦波や三角波などを与えてその応答を見るものです。
運動会の宝探しで箱を揺さぶって、中を調べる方法に似ています。

図35-周波数応答

4 ディジタル制御:

ディジタル制御の考え方を見てみましょう。ディジタルと言っても、PIDのは同じで、プログラムで実現しているものです。ディジタルの良いところはハードウエアが簡単になり、センサーとA/Dコンバーターがあれば完成します。マイコンチイップのPICやAVRファミリーは、A/Dコンバーターの内臓されている物が多いので、センサー+インターフェイス回路を作れば動作します。マイコンチップの値段は100~300円程度ですから、安く作れます。

比例制御Pは次のような制御をします。

図36-ディジタル制御P

比例制御の場合は設定値SVと測定値PVを比較して誤差Eを出していますのでこの部分をディジタルで置き換えます。図のフローチャートでは温度を計測して現在の値を取り込み、設定値との差を計算します。操作量MVは予め設定してある比例感度Kpから計算しパワー制御素子へ電力制御信号を送ります。そしてまたフローの最初に戻り温度の測定から繰り返します。

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比例積分制御(PI)の場合には誤差であるオフセットを積分(足し算)してゆけばよいので前回までの累積値と今回の誤差を足し算して積分値とします。これに積分定数Tiを掛けて、比例分と加えて全体の操作量を計算し出力します。

図37-PI制御

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図38-PID制御

比例積分微分制御(PID動作)の場合には微分を計算するために前回の誤差と現在の誤差を引き算します。差が大きいなら外乱が入ったことになるので直ぐ大きな操作量MVを作って取り返さなくてはなりません。後は比例、積分、微分を合計して操作量MVを作り操作部へ出力します。

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図39は実習用に試に組んだプログラムです。
製品を作るなら別ですが、教育実習なら簡単なものなのでも動作します。PICなどのマイクロコントローラで作って試してみるとよいでしょう。

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図39-プログラムサンプル例

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5 制御回路:

図40-ブリッジ

この章では主に温度制御で用いられる電気回路を見てゆくことにします。制御のための信号検出にはブリッジと呼ばれる回路が多く使われています。ブリッジ回路は図40のように4辺に素子が配置されその1辺がセンサーになっています。
出力は1-2間に現れます。ブリッジ回路の性質として式のように対角線上の素子を掛け合わせたものを等しくとるとノイズの影響をキャンセルできます。a×c=b×d

図41-センサー回路

この状態をバランス(平衡状態)していると言い検出信号はゼロになります。Dをセンサーにしてその抵抗値などが変わるとバランスが崩れて信号が現れます。ノイズはa-b側の比例辺とc-d側の比例辺に同時に乗るので1-2間には現れません。

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ブリッジ回路はセンサー回路として出力し次の差動入力増幅器に入ります。差動入力器はアンプの一種ですがやはりノイズを除去する働きがあります。差動増幅器はオペアンプ(OPアンプと称する)で作られます。OPアンプは後に取りあげます。

図42-センサー回路

白金温度センサーはよく3線式が用いられます。2線式は線の抵抗のためそのまま誤差になってしまいます。この線抵抗をrとすると図のように誤差になりますが、3線式で図43のように接続するとR1=R2の条件でキャンセルされます。他に4戦式もありこれは計測器などに応用されています。

図43-センサー回路例

パワーデバイス:

図44-サイリスタ制御

サイリスタはダイオードにスインチが付いた様なものです。ゲート信号(トリガー)が入った時にサイリスタがONします。一旦オンするとゲート信号を切ってもONし続けます。再びオフさせるには保持電圧以下にするか逆方向電圧を掛けるかしかありません。交流の場合には反対周期で逆方向に電圧が掛かるのでそこで自動的にオフします。

図45-パワーデバイス例

サイリスタは一旦オンするとゲート信号ではオフすることが出来ません。そこでゲート信号でオフできるように改造したものがGTO(Gate Turn Off)サイリスタです。またサイリスタでは交流の半分しか利用しないので一種の整流回路になります。もう半分の交流を利用できるようにしまものがTRIAC(Triode AC Controller)です。

図46-電力制御

SSRやサイリスタでは波の途中で強制的にONさせますので図のようにスパイク性のノイズが発生します。水の流れを門で強制的に止めると大きな波が発生するのと同じ理由です。ノイズは周辺の電子機器に影響を与えますから取り除く必要がありフィルターなどを入れなくてはなりません。そのために考え出されたのがゼロクロス制御方式です。
ゼロクロス制御ではゼロクロスディテクターという監視回路が電圧や電流がゼロになったポイントを検出してサイリスタなどをオン-オフさせます。波の途中で強制的にオンさせないのでノイズは発生しません。パワー制御は図のように何周期交流を通したかで制御します。それでは全てゼロクロス制御を取り入れたらよいのではと言うアイディアもでてくるはずですが、そうは行かない問題もあります。抵抗負荷なら問題は無いのですが、負荷にはモーターなどコイル成分を多く含んだ誘導負荷が多いものです。誘導負荷の場合には電圧と電流の波の変化の間に時間的なずれが生じる、いわゆる位相差が存在します。

図47-ゼロクロス制御

この位相差のため電圧ゼロや電流ゼロの時点でサイリスタなどをオン-オフさせても電力がうまく伝わりません。肝心の電力制御が出来なくなります。このためゼロクロス制御は使えないことになります。図48で-電力とは電源に戻される電力になります。充放電の放電をイメージすればよいでしょう。

図48-ゼロクロス制御L負荷

6 参考実習の手引:

ここではアナログIC2個を使った簡易温度コントローラを試作します。P(比例)制御方式(PWM制御)が理解できます。またトランジスタ、ダイオード、アナログ回路の基礎が身につきますので、工校、エンジニアの基礎トレーニングに適しております。アナログ回路の解説は別章のアナログ回路を参照してください。基板を起こしておくと便利ですが、ユニバーサル基板(穴あき基板)やブレッドボードでも製作可能です。アナログ回路は発振してしまったり、動作が不安定になったりとディジタル回路に比べて製作しにくい所もありますが、内部補償型のオペアンプを使えば、まず問題なく動作します。主な注意点は次の通りです。

1. 部品の足は短くしてください-アナログ回路は発振する場合があります。
2. 乾電池、OPアンプの異常な発熱や発振音などにも注意してください。
3. 回路図と基板のパターンを比べながら部品を装着してゆきます。
4. 前段の温度センサー部から組み上げ、デイジタルテスターにて動作を確認してゆきます。
5. 電源は006P型乾電池2個を用いますので極性に注意してください。

図49-実習回路図

図50-回路パターン

試作基板:
温度コントローラ試作キットです。温調だけでなくモーターも制御できます。バルブの開け閉めや舵のコントロールなどの実験にも使えると思います。
アナログで感触つかんでからディジタル回路でプログラム作りをお勧めします。

自動制御試作基板-温度コントローラKIT

是非作ってみたいと言う方は連絡ください。
パターン図と解説ファイルをお送りいたします(無料)。

*(有)寺子屋みほ 2005製作品

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