半導体プラズマ装置

半導体ではプラズマと呼ぶ放電を利用したプロセスも多いものです。
ここでは半導体プラズマ装置をコンパクトに解説します。
半導体プロセスは真空を応用した装置が多く見られますがその中でもプラズマと呼ぶ放電を利用したものが殆どで真空装置イコールプラズマ装置と言ったところです。プラズマCVD、プラズマドライエッチング、アッシャー、PVDやインプランテーションがそうです。半導体でプラズマとは直流や高周波放電のことです。放電し易くするためまた反応生成物を排気し取り除くため真空を利用します。図1は放電でのイオン化と励起を表した模式図です。減圧状態にした管中にガスを導入し外部から電圧を加えると電子が電界などにより加速され原子などに衝突し原子内部の電子が飛び出てイオン化する場合と電子が飛び出さないまでもより外側の軌道に移って励起状態になる場合とがあります。励起状態は不安定であり、また元の軌道に戻って安定する場合と近くの物質から電子を引き抜いてきて安定する場合があります。この電子のやりとりは化学反応そのものですからエンチングなどが進むわけです。

図1-プラズマの原理

図1-プラズマの原理

特に原子などが励起状態をとり化学的に活性になったものをラジカルと呼びます。ラジカルは中性です。よって放電管の中などでは中性原子や分子、電子、励起状態の原子やラジカル、イオンが混在した状態になっていると考えられます。ドライエッチのことをよくプラズマドライエッチと言いますが、プラズマとは“混沌とした“とか“ごちゃ混ぜの“と言う語源でラングミアと言う研究者が名付け親です。プラズマは難しくて理解し難いと言う言葉をよく耳にします。このような時には身近なもので考えと良いでしょう。放電現象で身近なものは蛍光灯やネオン管があります。プラズマ装置も原理的には全く同じです。蛍光灯はプロセスチャンバーそのものであり、内部のアルゴンガスや水銀蒸気はプロセスガスに相当しますし、電源の100ボルトに相当するものには高周波が用いられますが同じ交流です。蛍光灯は放電を安定させるため安定器(コイル)という部品が付いていますがこれはチューナー(整合器)というものになります(図2)。実際の半導体製造装置ではこの他にウエハのやりとりのためチャンバの周辺には色々な部品が付きます。また周辺機器や他に付帯設備もあります。

図2-蛍光灯とプラズマ装置

図2-蛍光灯とプラズマ装置

プラズマ装置ではどのようにしてパワーを注入するか(結合方式という)で図3に示すように6タイプあります。Aのタイプは誘導結合(コイル)によってプラズマを発生させるものでアッシャー(レジスト灰化装置)などに用いられています。Bのタイプの応用は余り見当たりませんがPVDの一種IMP(Ion Metal Plating)での応用が見られます。Cのタイプはリモートプラズマと言って発生したプラズマを別の処理チャンバーへ導くような装置で利用されます。化学的なエッチングなどに応用されます。Dのタイプは平行平板型と呼ばれプラズマ装置の主流です。電極がコンデンサのような構造になり両電極に発生する電界を積極的に利用しプロセスを行います。内電極タイプは電界を積極的に利用しイオンの衝撃力で化学反応をアシストしますが電極からの金属汚染などを考慮する必要があります。外電極タイプはこの点有利ですがチャンバーは石英やセラミックなど金属以外で作る必要があります。誘導結合と容量結合の組み合わせで高密度プラズマ装置として実用化されているものもあり多種になってきています。Eのタイプはリモートプラズマと呼ばれプラズマ発生室とプロセス室が分離されていて電界や荷電粒子の影響の無いエッチング等を実現します。プラズマ中で生成された活性種がチャンバーへ導かれ電界の作用が働かないため純粋に活性種による化学的なエッチングができます。
CDE(ケミカルドライエッチ)に利用されます。プラズマはアプリケータと呼ばれるプラズマ発生室にマイクロ波を当て作ります。一種のキャビティ(共振器)になっていて内部には石英やサファイヤのチューブが納められています。Fのタイプはマイクロ波を使ったCVDやエッチング装置に多く見られます。単モード型はチャンバをキャビティ(共振器)として働くようデザインされたもので高密度プラズマを作ろうとするものです。放電現象はキャパシタとして働くため共振条件(モードと言う)を揃え難いため多モードでプラズマを作るものをマルチモードと呼びます。マルチモードでは内部の電界強度は場所-場所で違いますからプラズマ密度も当然違ってきます。プラズマは拡散するので実用的には余り問題にならないようです。

図3-プラズマ装置分類

図3-プラズマ装置の6タイプ

これらの他にECR(Electron Cyclotron Resonance)を応用したプラズマ発生装置があります。875ガウスの磁場と2.45GHzのマイクロ波の組み合わせで電子がサイクロトン共振することを利用してプラズマを発生させます。高真空下で高密度プラズマを作れるためプロセスによっては有利ですが大きな電磁石を必要としますので大口径化には難点があります(図4左)。
ヘリコン波プラズマ発生装置です。マイクロ波のかわりにRFを用いると低磁場でもECR共振しますので装置自体が小型化でき大口径に向いているといわれます(図4右)。

図4-ヘリコン波プラズマ装置

図4-ヘリコン波とECRプラズマ装置

ところで蛍光灯は手で触れることができます。暖かい感じがしますが低温です。プラズマを使った装置はエッチングでもCVDでも低温プロセスになります。一般に化学反応を起こさせるには高温、高圧、大きなエネルギが必要ですがプラズマ放電を使うと少しのエネルギで化学反応が進みます。高温にする必要も大きなエネルギも要りません。配線工程のBEOLなどでは金属の酸化を抑えるためやトランジスタ特性維持のため500℃程度以下の低温でプロセスを行わなくてはなりません。プラズマ放電を使った低温プロセスは正にうってつけなわけです。図5にプラズマ応用装置の分類を示します。 半導体のプラズマはグロー放電とアーク放電に分かれます。

図5-プラズマ分類

図5-プラズマ分類

グロー放電のグローとは光輝くといった意味で弱いプラズマです。イオン化率は大変低く数%以下と言われています。実際には殆ど生ガスそのものと言っても良いくらいです。しかし半導体プロセスではそれで十分であり逆に低温プロセスとして用いられることになります。これらは直流(DC)を使うもの(PVDなど)と交流(実際は高周波)を使うものとに分類されます。PVDの場合にはターゲットの多くは金属であり電流を流すことができますので放電は安定して持続します。 一方ウエハそのものをエチングしたり膜をデポジションさせる場合には導電性の膜は稀であり多くは絶縁体を扱います。絶縁体中では直流放電ができませんので交流で放電させ、つまりプラズマを発生させかつ持続させています。交流は周波数の高い高周波を使い絶縁体中でも電流が通りやすいようにしています。実際の周波数は13.56MHzが多くこれらは世界的に採用されているISM(工業周波数)というもので規定されています。ISMの中にはマイクロ波(2.45GHz)も含まれこちらは一部半導体装置で使われています。インプランテーションではアーク放電を利用しています。
アークとは弧と言う意味で弧を引くように放電することからきています。身近な例では電気溶接があります。高温、高エネルギーです。インプランテーションでは不純物のイオンを数多く作ってシリコン基板に打ち込みp,nの半導体を作る必要があります。イオン化率の低いグロー放電では不純物を多く打ち込めませんので強いプラズマによりイオン化率を上げています。ピッグテイル(豚のシッポ)と呼ぶフィラメントに大電流を流してアーク放電を起こさせソースガスなどを解離させます。従ってチャンバーは1000度以上の高温になりますので、材質はモリブデンやタングステンを使用します。

プラズマ中ではイオン、電子、活性種ラジカルなどが生成されます。イオンは後で述べるシース電界により加速され運動エネルギーを得てウエハに衝突します。これは物理的な力を加えることになります。またラジカルは化学的に活性ですからウエハ上の膜と反応することになります。CVDでは解離したガスが表面反応によりウエハ上に膜をデポジションさせます。従ってプロセスチャンバー内部では化学反応と物理反応が同時に起こっています。CVD、エッチング、PVDなどはどちらを優先的に使うかで特性が決まります(図6)。

図6-プラズマのパラメータ

図6-プラズマのパラメータ

PVDはアルゴンイオンによるスパッタ作用でターゲットから金属原子をたたき出しますので物理的なプロセスです。エッチング、CVDでは化学的、物理的なプロセス両方を利用しています。次にチャンバーの中で発生するシースについて考えてみます。これがプロセスに重要な役目を果たしています。厳密に言うと学問的には正しくないかも知れませんが次のように考えます。平行平板形電極中で高周波放電を起こすと電子とイオンの対が発生します。この時、モビリティ(移動度)は電子の方が圧倒的に軽いので大きく、イオンは重いので小さくなります。電子は電極の極性に応じて直ちに電極に飛び込み電流となりますがイオンは電極の極性変化に追従できず中々電極に到達できません。イメージとして電流は電子によるものが支配的になります。プラズマの定義では中性ですが取り残されたイオンとの間に電位差を持ちこれがバイアス(片寄という意味のBIAS)です。このままではプラズマ中から電子が吸い取られるように無くなってしまいプラズマを維持できません。そこでシースが登場してきます。電極に飛び込んだ電子によってマイナスの電圧が電極に発生し図7中のB.C ブロッキングキャパシターに充電されるため)後から来る電子を弾き返します。こうしてイオンと電子のバランスが保たれ、従って電子の消滅を免れることができ、結果プラズマは生成維持されます。慣性の法則とでも言うか、一度生まれたものは存在し続けようとすることが多いもので、プラズマもシースを作って存在し続けようとしているのかも知れません。

図7-イオンシース発生

図7-イオンシース発生メカニズム

シースは電極前面に渡って発生しその回りをスピードの遅いイオンが取り巻いているように見えます。シース(Sheath)とは鞘のことで総称してイオンシースと呼びます。イオンシース中ではプラスイオンは加速され運動エネルギーを得てウエハに衝突します。その時運動エネルギーが熱エネルギーに変換され化学反応を促進したり物理的にエッチングしたりします(図8)。これはプロセスでは重要な現象です。シースは真空度によって異なり真空度が高いと厚くなります。シース内では電子が余りないのでプラズマ発生が抑えれて周辺より暗くなりますのでダークスペースなどとも呼ばれることがあります。ビューポートから見ると条件によりウエハの上部を取り巻くようにして薄暗い部分が観察できます。より物理的な作用が必要なプロセスでは真空度を上げて平均自由工程を長くしイオンが十分加速できるようにしなくてはなりません。しかしプラズマ発生率は下がりますので別の方法で補う必要も出てきます。シースはチャンバーの壁や対向電極でも発生しますのでシース内で加速された重いイオンの衝撃で表面のコーティングが剥げたり、ボロボロになります。しかしこれはプロセスでは必要なことでありトレードオフの関係になります。半導体装置ではこのシースをコントロールしてイオンを加速させるため下部電極にブロッキングキャパシターを通して給電でしています。これをRFバイアス(RFとはラジオ周波数のことで一般には工業周波数の13.56MHzを用います)と呼びます。半導体で使用する工業用周波数にはこの他に低周波の400KHzやマイクロ波の2.45GHzなどがあります。

図8-イオンシース

図8-イオンシース

最後にここ数年トレンドになっている装置として高密度プラズマ(HDP:Hi Density Plasma)があります。これはプラズマ発生用のソース源と発生したイオンを引き付けて運動エネルギを与えるバイアス源を持ったものです。平行平板型のプラズマ装置ではイオンエネルギーを強く引き出そうとすると活性種も同時に多く発生します。またケミカル作用を多く取り出そうとパワーを上げればイオンエネルギーも上がってしまします。このタイプではイオンソース源には誘導結合を利用して無電極でプラズマを生成し、イオンエネルギーのコントロールは別電源を下部電極に接続してコントロールしており、お互い独立しているためプロセスの自由度が高くなっています。ソース源の均一性を高めるため誘導コイルを2分割してジェネレータも2個装備している製品もあります。

図9-HDP

図9-HDP

 

 

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