フォトリソグラフィー

フォトリソグラフィーはシリコン中にトランジスタや構造体を作ったりする工程の要です。
ここではなるべく簡単&コンパクトに解説いたします。

半導体は写真技術を使って縮小露光により微細なパターンをウエハ上に転写し構造体を作って行くものです。リソグラフィとは石版印刷のことですが、光(フォト)を使うのでフォトリソグラフィイ(Photo-lithography)と言います。今では辞書にも載っていますね。露光機(ステッパーとも言う)を中核とする工程で微細な構造体をつくるキーとなるものです。レジストと呼ばれる感光剤をシリコン基盤に塗るコーター(Coater)やデベロッパー(Developer)と言う現像機などで構成されています。さらに加熱するためのベーク(Bake)、ホットプレートなどが一体化されたセットになっています。最先端工場ではエキシマレーザー光を使った露光装置を使用しており、光の波長はArFで197nmと短く、使用するレジストもアンモニア雰囲気に敏感な化学増幅型になり環境管理がすっかり難しくなりました。図1はレジスト塗布から露光、現像までの概要を示しています。

図1-フォトリソグラフィ工程

図1-フォトリソグラフィ工程

フォトリソグラフィの工程は図2のようなフローになっていて各工程が少しでも変わってしまうと次工程に影響が出てしまいます。まず接着剤を塗布します。これがないと次のレジストがうまくウエハに塗れません。レジストを塗る装置はコータ(Coater)と言うものです。真空チャックでウエハを保持しながら回転させてレジストを均一に塗ります。レジストの粘度、チャックの加速度と回転数でレジストの厚さを決めています。半導体の黎明期ではスポイトで垂らして手塗りでした。今はこんなことやっては全滅=リワークですね!レジストの均一性が悪いと露光でうまくパターンが転写できません。装置的に工夫されていてモーターは振動の極力無いものを開発しています。振動でレジストが波を打って塗布されるストレーションと言う現象もあります。モーターの熱がチャックに伝わってトラブルになることもあり熱的に絶縁したりチャックの材質や形状を工夫したりしています。レジスト塗布と排気もバランスさせなくてはなりませんので排気ダンパでコントロールしています。ベークはベーカリーのBakeでホットプレートの上でレジストを加熱するものです。レジスト中の溶剤を飛ばしたり、ウエハとの密着性や耐熱性を向上させたりします。約90℃から100℃くらいが多いのですが形状重視のためレジスト自体が耐熱性の無いものが多くなって来ており低温化と共にプラズマ耐性やインプラ耐性なども考慮しなくてはなりません。最後のUV Cureはやる場合とやらない場合がありますが紫外線を当ててレジストの架橋作用を強め耐熱性・耐プラズマ性などを改善するものです。効果は絶大ですが、次工程のレジスト剥離が困難になったりしますので工程はトータルで考えないといけません。

図2-工程フロー

図2-工程フロー

露光(Exposure)はレチクル(ガラス板にクロムで作ったパターンが描かれている)上のパターンをレンズで収束してレジストに焼付けます(写真1)。カメラの撮影と同じ原理です。実際には何分の一かに縮小して焼付けますので縮小露光といいます。始めは10:1でしたが5:1になり現在4:1です。これは解像度をあげるため光の波長を短くしてゆくとレンズが出来難くなるためです。波長の短い光は曲がり難くなるのでレンズ材質の検討が必要です。石英では限界があり最近ではホタル石などを使用しています。露光機はステッパーとも呼ばれウエハ上に1パターンづつステップしながら焼き付けてゆきます。これは重ね合わせ精度を保つためで1パターンづづアライメントを取りながらパターンをつけてゆくためです。半導体は幾つかのパターンを積み重ねて構造体を作ります。要は重ね合わせ精度が問題でアライメント精度とも言います。
図3はこの重ね合わせの概念です。前の工程で作っておいたアライメントマークを目印にして次のパターンをアライメントする様子です。

図3-アライメントの概念

図3-アライメントの概念

 

写真-

写真1-レチクルの例

PEBはPost Exposure Bakeの略で化学増幅型レジストの場合にはここでパターンの出き不出来が決まってしまいます。Develop(現像)は強アルカリ液でポジ型レジストの場合は光で感光した部分を溶かしてマスクパターンを転写させます。マスクパターンと同じパターンになりますのでポジ(正転)と呼びます。ネガ(反転)型では反対に光が当たった部分が現像液に溶けずに残ります。マスクパターンを反転したものができます。デベロッパ装置の構造はレジストコータと略同じです。工程中のDescumとはスカムという未現像の細かいレジスト残りを処理するもので、別の薬液を使って除去しますが第2の現像と言ってよいでしょう。最後のUV Cureは紫外線によってレジストの架橋反応を促進し耐熱性、耐プラズマ性を向上させたりするものですが全て行うわけではありません。レジストが硬化し過ぎると後で剥離できなくなってしまうこともあります。

図4は私が社員研修で使用している模擬ICのパターンですがコンタクトからメタル1、Via、メタル2までのマスクです。上部の左右にT型のマークがありますがこれがアライメントマークです。レチクル上にこのタパーンが描かれておりステッパーが前のマーク上にアライメントを合わせながら重ねてゆきます。

図4-模擬レチクルセットパターン

図4-模擬レチクルセットパターン

アライメントをどこで合わせるかという問題があります。基本的に前のパターンに合わせるのですが、実際の現場ではステッパーの合わせ精度の問題もありうまく行かない場合が出てきます。各レベルで除々にずれてくると次第にどうしても合わなくなってきます。どこかで破綻をきたすので人間がアシストしてアライメントすることもあります。
アライメントツリーというものがあり系統樹のようにアライメントの関係を考えますが往々にしてこの図が描けなくなる場合がでてきます。アライメントを助けるためエッチングではセルフアラインコンタクトSACなどの技術やデザイン的にマージンを持たせるなどのアプローチもあります。
ステッパーは精度よくパターンを転写できますが一個づつでは時間が掛ってしまいますので実際はパターンを何枚かセットしてレチクルに配置しています。図5は例えばですが、点線のレンズ内で、6バーレチクルといい6個同じパターンをワンセットにして一気にパターニングして行きます。スループットは1個のものより6倍になります。ただし転写性の良いものはレンズ中心の2個でレンズ周辺のものはどうしても歪みますので歩留まりに影響する場合もあります。

図-6バーレチクル

図-5バーレチクル

NA:開口数(レンズの大きさ-解像度を決める)
DOF:焦点深度(どこまでピント合うか)

式-レーリーの式

式1-レーリーの式

開口数NAと焦点深度DOFの関係は誰でも経験するところです。試しに顕微鏡を覗いてみると倍率が低い時はピントは大雑把でも合うものです。低倍率では焦点深度が深いからです。高倍率では少しダイヤルを回すとピントがずれて像がボケて見えなくなってしまいます。焦点深度が浅いからです。NAは大きい方が解像度は高くなりますが使いづらくなるので、最近の露光機はNA可変になっています。レンズを使う限りにおいては解像度と焦点深度は永遠の問題で、様々な技術が開発されてきています。その一例がエキシマレーザー光と化学増幅レジストです。
図6は開口数と焦点深度の関係を模してあります。NAとは図中のSinθのことです。レンズは特性上一点でしか焦点が合いません。
従って→ ←でしめした部分が最もピンとが合う部分でジャストフォーカスといいます。いわゆるくびれが最小になる所です。そしてジャストフォーカス部分から上下の何パーセントかをピントの合う範囲-ピンボケを許容できる範囲-として焦点深度DOFと定義します。この焦点深度は深い方が有利ですが解像度とはトレードオフの関係になります。解像度を上げると焦点深度は浅くなってしまいます。NAが大きくなるとくびれが小さくなって解像度が上がったことになります。ジャストフォーカスから上がっても下がっても焦点はずれますので像はピンボケになります。どの位まで許されるかは状況によりますが仮にaとしておくと、ジャストフォーカスからこの距離に到達するまでが焦点深度DOFです。このDOFの範囲内で正しく像が転写されます。NAが大きいレンズでは  が大きいため少しでもジャストフォーカスから上下するとaの値になってしまいます。デバイスは構造体を積み重ねて作りますから凸凹してきます。でこぼこの山と谷を段差といいます。段差が焦点深度DOFの範囲内であればパターニングが可能です。最新のデバイスでは微細化のため焦点深度が極端に浅くなっていてそのため段差を削って平坦化するCMPが使われています。

図-焦点深度DOE

図6-焦点深度DOE

従来、露光機(ステッパー)の光の波長はi線と呼ばれる365nmで高圧水銀ランプにて発生した光をフィルタを通して用いていました。微細なパターンの形成には光の波長を短くしなくてはなりません。そのため最近のステッパーではエキシマレーザー光を使っております。KrFはF2とKrにAr添加のガスを放電させて生成するKrF分子が不安定で、直ぐ消滅する際に発する248nmの光を利用しています。同様にArFは194nmの光を発生します。理論上解像度は上がりますが通常のレジストでは感度が悪くまた短波長光でるためレジストの下まで通過しません。レジストが厚くできないので化学増幅型レジストが開発されました。ポイントはPAG(Photo Acid Generator)と言う酸発生剤が入っていることです。レジストに光が当たると酸発生剤PAGが酸を発生させ樹脂と反応しアルカリに可溶な状態になります。樹脂が反応し分解する時に再び酸を発生させその酸が樹脂と反応すると言うふうにしてこの繰り返しで反応は進んでゆきます。

図-エキシマレーザー工程

図7-エキシマレーザー工程

エネルギを持った光の粒子はフォトン(光子)といいますが、通常のレジストでは1個のフォトンは1反応にしか寄与しません。化学増幅型レジストでは1個のフォトンで複数の反応を起こすことが出来ますのでこの名がつきました。PEBで加熱することで反応が促進されますのでPEBの温度や時間管理は厳密です。パターン転写性はPEBで決まります。また環境にも敏感で発生した酸がアルカリ雰囲気で中和されると反応がストップします。典型的な例はT-TOPというものでレジスト上部が未現像になりヒサシが突き出た様な形状になる場合があります。ウエハの膜質(TiN、Si3N4、SiON膜等)によってはアンモニア雰囲気のため裾引現象が現れることもあります。アンモニア雰囲気を除去するためケミカルフィルターがデベロパ装置などに付属しています。図7にエキシマレーザーによるフォトリソグラフィ工程を示しておきます。。

写真2にパターン欠陥の例を挙げます。左はライン間のスカムでレジスト横に黒く薄いレジストが残っています。中央はコンタクトが円錐状になったものでコンタクトボトムの面積が稼げず接触不良になる恐れがあります。右はブリッジングといい焦点深度不足で解像されずライン同士がくっついてしまったものです。いずれも歩留まりに強く影響します。

写真2-ディフォーカスの例

写真2-ディフォーカスの例

微細化のためには次のようなものが挙げられます。
1.露光装置ではNAの大きなレンズを使う、露光波長λを短くする・・・i線からエキシマレーザーへKrF、ArF
2.照明系・・・位相シフト技術、輪帯照明系の採用
3.レジストの開発・・・化学増幅型、反射防止膜-TARCとBARC、MLR-多層レジスト
4.露光装置を助ける・・・デバイスの平坦化(CMP)、SACセルフアラインコンタクトなどのマージン              のあるプロセス開発、プロセスマージンのあるデザイン

解像度を上げる試みは位相シフトという技術を生みました(図8)。レチクルに位相シフタというものを取りつけます。シフタを通った光は位相が逆転します。したがってシフタを通らない光との山谷が互いに反対で打ち消しあいその部分の光強度が低下します。このため像のエッジがシャープになり実質解像度が上がったことになります。焦点深度DOFを低下させないで解像度を上げる有効な方法の一つです。レチクルのパターンエッジにシフタを作るのは大変な作業ですので検査費用も含めコストが掛かるものです。

図6-フェイズシフトの概念

図8-フェイズシフトの概念

露光装置(ステッパー)の照明系にアパーチャという絞りがあります。光量を適当に調整するものですが、ここに輪帯照明用のアパーチャを取りつけるというものがあります。カメラ撮影でも絞り込んだほうが焦点深度は深くなりシャープな写真が得られますが似たような原理です。輪帯照明用アパーチャの形は様々ですが蓮根状や2重輪のようなものもあります。光が斜めから入るので解像度と焦点深度DOFは改善されますが、転写プロファイル、線幅均一性などは悪化します(図9)。

図-環帯照明

図9-環帯照明

微細パターン形成を阻害するものに膜の反射があります。特に金属は反射しやすく余計な光によって不必要な部分までも露光されます。現像後は形状異常となって現れマスクとして使えません。写真3はアルミ膜の上に付けたレジストが反射光で異常露光されパターンが崩れた例です。

写真-アルミ反射によろレジスト変形

写真3-アルミ反射によろレジスト変形

デバイスの膜表面は工程によって凸凹していますので丁度凹面鏡のようになりレンズ効果で強められます。光は下地のターゲット膜の上下、レジスト膜の上部でも反射しそれぞれが複雑に干渉しあってきますからそれぞれに対策が必要です。ターゲット膜の反射を抑えるものをBARC(Bottom Anti Reflection Coat)といい感光剤の入っていないレジストのようなものです。TARCはTop Anti Reflection CoatまたはCEL Contrast Enhanced Layerといいます。共にコータで塗ります。TARCの主成分はデンプンプラスチックで現像のとき溶けて無くなります。BARCはレジストを現像後にドライエッチング装置で酸素プラズマでドライ現像します。流れは表のようになり少し複雑になります。またTARCは前にも述べました化学増幅型レジストの上層保護膜となりアンモニアなどのアルカリ雰囲気から保護しT-TOPなどの障害を防いでいます。BARCもまたアンモニア雰囲気を含んだ下地膜の影響から保護する役目もあります(図10参照)。

図-BARCとTARC

図10-BARCとTARC

写真4にBARCを使ったレジストの断面写真を載せておきます。下に見える薄い台形部分がBARCで上がレジストです。これは酸素プラズマによるドライ現像後の写真です。またBARCのフローを図11に示します。

写真-MLR多層レジスト

写真4-MLR多層レジスト

表-MLR多層レジスト工程

図11-MLR多層レジスト工程例

一般にレジストは厚さが薄い程感度が高くなり微細化に有利です。レジスト厚さの要求は次工程のドライエッチングやインプランテーションからきますが、厚いレジストを下まで感光させるには苦労します。先ほど下地の膜からの反射光を無くす目的でBARCを使うといいましたが、下地からの反射光と入射光の干渉、つまり定在波を使ってパターニンを作ってもいます。レジストの底の方では光が弱いので反射光を使って強めているようなものです。

従ってレジスト膜厚は定在波を有効に使うため連続した値とはならず飛び飛びになっています。またレジストだけでは耐性が確保できない場合などMLR(Multi Layer Resist)多層レジストを使うことがあります。図10では2層、3層の場合を示しましたが、中間層膜はSOGやDOGと言った材料をいます。これはトップレジストを通常通り現像した後、ドライエチング装置にてエッチングします。ボトムレジストもドライエッチですからエッチング工程には負担になりますが、微細化には有効な方法の一つです。それにしても半導体工程でレジストの進化には驚かされます。微細化のカギは何と言っても露光機でしょうが、陰の主役はレジストです。σはコヒーレントファクタで式2で求めます。レジストと他の露光条件によって最適のNAとσの組み合わせが存在し、いつも技術者はデバイスの構造に合わせて最適の条件を追求しています。よく経験したのですが、次のデバイスを開発する時になって、もう限界だからと新しい別の工程を試し始めるのですが、いつの間にかレジストの能力がアップされて来て解決しました。これからもレジストは進化してゆくことでしょう。

式-コヒーレントファクター

式2-コヒーレントファクター

最後に、露光機はステッパーともよばれますが現在、最先端の工程ではスキャニングステッパーというものを使用しています。一昔前のメガネは円形のレンズでした。古くなったメガネをもらって望遠鏡を作って遊びましたがレンズ周辺は像が歪んでしまいます。レンズは中心の方が精度よく出来上がっていますからいいとこ取りすれば歪のないパターン転写が出来ます。このようなコンセプトでレチクルを移動させながら一部づづ転写してく方法がスキャニングステッパーです。もちろんウエハの置かれたステージも一緒に同期して動かさなくてはなりません。このため高度な制御と機械的精度要求されます。レンズの製作でも精密機械製造でも日本が世界に誇る技術です(図12)。

図-スキャニングステッパー

図12-スキャニングステッパー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

w

%s と連携中