エッチング

ドライエッチングはフォトリソグラフィーとあいまってデバイスの構造体を作る要の工程です。
コンパクトに解説いたします。

2013年11月11日 更新(加筆)

ドライエッチング(Dry Etching) はハロゲン系の反応性ガスを真空容器中で放電によって解離させ、発生した活性種を膜と反応させて削る(エッチング)工程です。フォトリソと相まって微細化構造体をつくるものです。なぜドライかと言うと30年以上前には薬液を使って膜を削るウエットエッチングと言うものが主体でした。微細化ができないため現在ではガスを使うドライエッチングが主流です。ちょっと漫画チックですが、装置は図1に示した様な構成で成り立っております。学校で実験する程度なら個人でも組み立てられます。私も何台か作って実験などしておりました。

図1-エッチングの概要

ドライエッチとウエットエッチの優位点と欠点を比較すれば裏表の関係になります。微細な加工ではドライエッチが必須です。ウエットエッチも一気に大量の枚数を処理でき、ダメージフリーでプロセス後もクリーンであるなどから今でも一部の工程で使われています。項目にある
選択性とはエッチングすべき膜とエッチングしない膜とのエッチレート(時間当たりのエッチング量)を比較したものです。一般的には高い方が有利です。

表1-ウエットVsドライエッチの比較例

エッチングする構造体は一般に図2に示すようなものです。レジストをマスクとしてエッチングすべき膜をターゲット膜と言います。ターゲット膜の下には通常ストップ膜があります。ストップ膜はSiO2のことが多いのですが前工程ではシリコンの場合もあります。ターゲット膜は早くエチングしたいのでエッチレートは高く、下地のストップ膜はエッチングしたくないので低く抑えたいものです。ターゲット膜のエッチレートをストップ膜のエッチレートで割った値を選択比と言います。

図2-エッチングの一般仕様

下地(ストップ膜)との選択比はいくつ以上とか決めて条件出しをします。厳しい条件では選択比が高く取れず下地をエッチングしてしまい穴を空けたりする失敗もあります。またマスクのレジストに対しても同様で、マスクはエッチング中プラズマで分解して行きますのでエッチング終了までは残っていなくてはなりません。マスクに対する選択比も同様にして計算します。

プロセスチャンバーは真空容器であり真空ポンプにて排気されます。通常は2つの平行電極間にプロセスガスが導入され減圧下で高周波により放電を起こさせてこの中にウェハを入れてエッチングをします。エッチングする膜の種類によりガスが選ばれますが、化学的に活性なハロゲン族を含むガスと不活性ガスが用いられます。

図3と図4は放電でのイオン化と励起を表した模式図です。電子が電界などにより加速され原子などに衝突すると原子内部の電子が飛び出てイオン化する場合と電子が飛び出さないまでもより外側の軌道に移って励起状態になる場合とがあります。励起状態は不安定であり、また元の軌道に戻って安定する場合と近くの物質から電子を引き抜いてきて安定する場合があります。この電子のやりとりは化学反応そのものですからエンチングが進むわけです。特に原子などが励起状態をとり化学的に活性になったものをラジカルと呼びます。ラジカルは中性です。よって放電管の中などでは中性原子や分子、電子、励起状態の原子やラジカル、イオンが混在した状態になっていると考えられます。ドライエッチのことをよくプラズマドライエッチと言いますが、プラズマとは“混沌とした“とか“ごちゃ混ぜの“と言う意味のギリシャ語です。
放電現象で身近なものは蛍光灯やネオン管があります。ドライエッチ装置も原理的には全く同じです。蛍光灯はプロセスチャンバーそのものであり、内部のアルゴンガスや水銀蒸気はエッチングガスに相当しますし、電源の100ボルトはエッチングエッチング装置では高周波が用いられますが同じ交流です。蛍光灯の放電を安定させる安定器(コイル)はチューナー(整合器)というものになります。蛍光灯は手で触れることができます。暖かい感じがしますが低温です。プラズマを使った装置はエッチングでもCVDでも低温プロセスになります。一般に化学反応を起こさせるには高温、高圧、大きなエネルギが必要ですがプラズマ放電を使うと少しのエネルギで化学反応が進みます。高温にする必要も大きなエネルギも要りません。配線工程のBEOLなどでは金属の酸化を抑えるためやトランジスタ特性維持のため500℃程度以下の低温でプロセスを行わなくてはなりません。プラズマ放電を使った低温プロセスは正にうってつけなわけです。

図3-プラズマの概念

図4-放電によるプラズマの発生

例えばシリコンSiをエッチングする場合にはCF4と言うガスを使います。CF4がプラズマ放電で一部解離し+イオンと電子それに活性種(ラジカルと言う)がCF4ガスと混在した状態になります。活性種ラジカルがターゲット膜表面に吸着すると膜と化学反応を起こし反応生成物ができます。できた反応生成物は揮発性で直ぐに蒸発して飛んでいってしまいます。これを式にすると式1のようになりますが、左辺はシリコンSiという固体膜であり右辺は揮発性のガスです。エッチングでは必ず右辺は揮発性のものでなければなりません。余談ですがCVDの場合右辺は固体膜になります。

式1-エッチングの式例

Fラジカルを表すために文字の上に*が付いています。活性種のFラジカルのことです。
ハロゲン族のラジカルはその他に塩素ラジカルCl、臭素ラジカルBr等があります。
以上を踏まえて考えますとエッチングのメカニズムは図5のようになります。

図5-エッチングのメカニズム

エッチングガスには活性なラジカルを作るもの以外にも不活性ガスやあえてエッチングを阻害するガスなども添加します。ラジカルは中性なのでプラズマ中を勝手に動き回ります。ラジカルは図6で示したようにマスクの下の膜にも横方向から回り込んで薬液による化学的エチングと同じ様に膜を等方的にエッチングします(Isotropic Etch)。アンダーカット、サイドエッチと言う現象が現れます(図7)。寸法制御ができませんので何らかの工夫が必要です。

図7-サイドエッチング

この時用いられるのが中性ガスによるイオン衝撃やデポジションを起こすガスの添加です。
図8で示すように中性ラジカルによる横方向のエッチングを防ぐため側壁保護膜を作っています。このためわざとエッチングを阻害しデポジションを起こすガスを添加しています。トンネルを掘る時のシールド工法に似ています。崩れやすい地盤で壁をセメントや樹脂で固めながら掘り進むようなものです。エッチングは横方向には進まず立て方向にだけ進みますのでこれを異方向性エッチング(Unisotropic Etch)と呼んでいます。もちろん立て方向の膜にも保護膜は付きますが電極間の電界で垂直方向に加速された+イオンがこの保護膜を常に破壊していますので立て方向のエッチングは進行します。横方向へのイオン照射は少なく保護膜は保たれます。ブロッキングメカニズムと呼びます。また デポジション性のガスを添加するもう一つの理由は下地との選択比を上げるためもあります。

図8-異方性エッチング
図8-異方性エッチングどの膜に対しどのガスを選べばよいかは略決まっております。
多結晶シリコン(ポリシリコン)や単結晶シリコン(シングルシリコン)では次のようなものです。エッチングとデポジション効果両方兼ね備えているガスもあります。また希釈してプラズマ放電を安定化したり冷却のため添加するものもあります。意外と忘れてならないのが第3番目のガス、レジストマスクです。レジストマスクはプラズマで解離し色々なものを放出します。レジストからの解離物はエッチングに強く影響しますので種類を変えたり、ベーク温度を変えた場合などには注意が必要です。CF4、Cl2-エッチング/デポジション、Hbr-デポジション/エッチング
SiF4-エッチング、HCl-エッチング/デポジション、He-希釈、
O2-デポジション促進表2-エッチング用ガスの例

エッチングのキーポイントは中性活性種ラジカルによる化学的エッチングとイオン運動エネルギーによるアシスト効果、デポジションによるコントロールです。装置的に多用されているのは平行平板型RIEと言いチャンバーの中に上部電極をアノード、下部電極をカソードとして配置した平行平板電極中でウエハはカソード側に置いてB.Cブロッキングキャパシタを介して高周波電力を供給してプラズマ放電起こさせるものです。ブロッキングキャパシタはカソード側にマイナスの電圧を発生させこれによりプラスイオンを引き付けイオンに運動エネルギーを与えます。ガスの種類と高周波パワー、圧力などの条件を整えると異方性エチングが可能です。反応性ガス(化学的)とイオンの運動エネルギ(物理的)を両方使うためReactive Ion Etchの頭文字を取ってRIEと言います。シリコンエンチングはシリコン原子間の結合が弱いので化学的なエッチングで対応できます。余りパワーを必要としません。酸化膜SiO2はシリコンと酸素の結合力が強く物理的なエッチングが必要です。CF4にArを添加し+のArイオンを電界で加速させ酸化膜にぶつけて、その時のエネルギーで結合を外してエッチングしますので比較的大きなパワー(高周波電力)が必要です。これらの原理を絵にすると図9のようになるでしょう。平行平板型RIEと言うノーマルなエッチング装置の原理です。

図9-エッチング原理

エチングはイオンの物理的エネルギと中性活性種ラジカルによる化学的エッチングの兼ね合いできまりますから各種の方式があります。ざっと見渡しますと・・・

1) CDE(ケミカルドライエッチ)フリーラジカルによるエッチングで化学的な
エチング作用によるもの。
ウエット的要素が強い 、等方性エッチング、選択性高い
2) Sputter etch  (物理的スパッタ作用)によるエッチング。
Arなどによる場合が多い。異方性、選択性低い
3) RIE (Reactive Ion Etching )
化学的作用と物理的作用の両方を用いたエッチング

4)高密度プラズマ(Hi Density Plasma)ここ数年のトレンドです。
プラズマを作るソース部とイオンエネルギをコントロールするバイアス部
に分かれていて独立にコントロールできるためプロセスウンドウが広く
なります。コイル状の電極に高周波を加えプラズマを作ります。
ウエハの置かれるところはカソードで下部より別の高周波が加えられます。
5)この他にマイクロ波と磁界の共振を利用して高密度プラズマを発生させる
ECRやヘリコン波プラズマ装置も実用化されています。

図10-DPS高密度プラズマ装置

図11はエッチング形状制御の例です。
Aの異方性はイオンエネルギとデポジションガスの組み合わせを調整して実現します。写真1はアルミニウムの異方性エッチング例です。

写真1-異方性エッチング

Bはテーパエッチと言って壁にスロープを付けます。デポジションガスを添加して角度を調整します。
また化学的なCDEのようなエッチングではCのようになりウエットエッチに近い形状が得られます。Dは等方性と異方性を組み合わせてPVD膜などがコンタクトなどの穴に入りやすいようにするためのテクニックです。写真2はシャンペングラスエッチと言う芸当です。

写真3-シャンペングラス

通常のエッチングではレジストマスクの下にターゲット膜がありその下にストップ膜があります。ターゲット膜のエッチングが終わるとストップ膜はエッチングができないか非常に遅いスピードでエッチングされますのでコントロールは容易です。Eの様にシリコンウエハに溝を作ったりトレンチキャパシタやMEMSで加速度センサなどを作る場合には通常エッチストップ膜がありません。エッチング時間は時間管理かレーザー干渉計などで決めます。写真3はシリコン中に作ったトレンチです。

写真3-シリコントレンチ

図11-色々なエッチング形状

ここでエッチングでのいくつかの問題点を挙げておくことにします。一つはアルミエッチで発生するコロージョン(錆)です。アルミエッチではCL2やBCL3などの塩素系のガスを使用します。エッチングによって塩化物の副生成物がつくられ、エッチング終了後チャンバーから大気に取り出されると、大気中の水蒸気と反応して酸ができます。のこ酸によってアルミが腐食します。結果断線しますし、又僅かの塩化物が残っていても後で悪さをして信頼性に影響します。アフターコロージョンと呼びます。対処方法は水洗が一番ですが直ぐに出来ない場合には
①ホットプレートで加熱し塩素を追い出す。
②フッ素プラズマで塩素を置換する。
③レジストを燃やして取り除くなどがあります。

写真4-アフターコロージョンの例

レジストを酸素プラズマで燃やし(灰化、アッシングと言う)水蒸気プラズマで塩素を置換するドライ処理もあります。この場合装置はCDEのような構成でマイクロ波によるプラズマを使用しています。

図12-CDE装置概要

マイクロローディング効果(負荷効果)はデバイス上の微細なパターンやコンタクトなどでエッチングレートや選択比などが変化する現象です。図13ではパターンが密集しているエリアではエッチレートが低くなり疎パターンでは高くなることを示しています。原因は様々ですがイオンやラジカルの入射頻度、プラズマ密度や圧力との関係などで説明されています。たまに密パターンでエッチングレートが高くなる逆ローディング効果もあります。

図13-ローディング効果

エッチング残渣はエッチングしきれず残ったものです。写真14はポリシリコンエッチングで窪んだ形状の壁側に突起状に残った膜の残骸です。ドライエッチでは色々な条件を組合わすことが出来ますので残渣処理のステップを入れることもあります。

写真5-エッチング残渣例

ドライエッチではプラズマ放電のよって光や熱が加わりレジストと副生成物が反応してより強固な副生成物ができます。写真6はアルミ上に残った生成物です。エッチングで対応できない場合にはクリーンプロセスも同時に開発する必要があります。配線のエッチングでは両側の壁に沿って突き立った形状に残るためラビットイヤー(うさぎの耳)と言います。

写真6-ポリマー残渣例

終点検出器(エンドポイントディテクタ)はエッチングの終わりを検出するものです。プラズマ放電はガスの種類でエチング種特有の光を出します。この光の変化を捉えて終点検出に使っています。

表3-波長表

表3に一部載せてありますが、これ以外にも多数ありその時々で使いやすい波長を選びます。以前はフィルタを通して希望の波長を選択していましたが、現在はモノクロメータで連続的に解析しています。一つの波長モニタでは変化が捕らえられない場合には2波長モニタ(2チャンネル)も可能です。この場合、一つのチャネルをA、他をBとすると装置側でA+BやA-Bなどといった演算をして終点を計算します。終点を検出する発光強度(インテンシティ)には大きく2種類あり終点と共に強度が低くなる場合と高くなる場合です。シリコンエッチなどでフロンFを使っているような場合でFをモニタしていると始めはFラジカルが膜と盛んに反応して消費されますから発光強度は上がりません。終点が近づくと膜との反応で消費されるラジカルよりプラズマで生成されるラジカルが多くなり強度が上がってきます。またアルミエッチングでAlの放つ396nmの光をモニタしている場合などは終点が近づいてアルミ膜が無くなってくると強度が落ちます。終点を検出する方法は他のも幾つかありますが、プラズマの出す光の波長をモニタする方法が非接触であり簡便で有効な方法です。

図14-EDP

図15-EPD波形変化概念

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