ウエットプロセス

執筆中-2013年10月2日 更新(加筆)

=====ウエット洗浄技術をコンパクトにまとめてみました=============

ウエットプロセスは薬品を使って材料の洗浄や除去などを行います。特にゴミ・汚染物質の除去はイールド(歩留)に大きく係ってきますので重要なプロセスになっています。ウエットプロセスはデバイス製造のキーとなるものです。デバイスは100個つくったら100個できる訳ではありません。歩留(イールドともいう)はデバイスの種類によりだいぶ異なりますが100%ということはまずありません。場合によってはゼロに近いか数パーセント以下といったものもあります。特に工程が長くなると極端に歩留は低下します。工程を出来るだけ簡素化し足の速いデバイスを設計するのも歩留向上の手法ですが、どうしてもパーティクル(いわゆるゴミ)の付着や汚染は避けられません。そこでウエット洗浄で取り除き歩留を上げる必要があります(図1-構成図)。取り除くべき対象は①無機物、②有機物、③金属汚染物質、④自然酸化膜(Native Oxide)、また剥離プロセスとして⑤酸化膜、窒化膜などのプロセス膜、⑥シリサイド形成時の未反応金属などです。①の無機物の代表は大雑把にパーティクルと言われている主に固形物のゴミです。②の有機物はカーボンコンタミと呼ばれ色々なものが存在しています。ゲート酸化膜などの耐圧不良や欠陥を引き起こすなどの問題があります。またレジストは有機質のため特にコンタクトエッチ後に底部のシリコン面へポリマーと呼ぶレジストとエッチングガスで生成する重合膜が付着しコンタクト抵抗を増加させてしまいます。③の金属汚染は絶対にあってはならない汚染であり、pn接合部の耐圧を劣化させて接合リークを起こします。有機汚染物質と金属汚染物質はどの工程でも付いて回りますから両者を洗浄するために洗浄槽(バスと言う)を2つ用意しておいてシーケンス的に処理を行っています。

ウエット洗浄機の構成

表1に半導体プロセスで用いる代表的な薬液を載せてあります。SPMは硫酸・過酸化水素水で有機物の除去を主な目的とします。APMはアンモニア・過酸化水素水でやはり有機物の除去です。HPMは塩酸・過酸化水素水で金属汚染物の除去用です。特に前工程ではSPM・APMとHPMは対になって使われることが多くウエットステーションと呼ぶ装置構成で洗浄処理はシーケンシャルに進みます。

半導体で典型的な洗浄薬

ここでは基礎講座なので少し掘り下げてみましょう。SPM(Sulfuric acid Peroxide Mixture:硫酸過水)でCAROまたはピラナクリーンと呼ばれるものです。ところでSPMは。
ピラニアの様に動物=有機物を食って取ってしまうイメージから名付けられたのでしょう。
強力な酸化洗浄作用でレジスト剥離、有機物除去、サリサイドプロセスでの未反応金属の除去などに使用します。残留Sの関係でパーティクルが増加することや廃液処理のコストなどから用いられるのが少なくなってきているようです。また過酸化水素の代わりにオゾンO3を使ったものはSOMと言います。AMP(Ammonia-Hydrogen Peroxide Mixture:アンモニア過水)シリコン酸化作用とシリコン酸化膜エッチング作用+表面親疎水化作用がありパーティクルの除去に用いる。また有機物を分解して除去する効果がある。シリコン面をエッチングするため表面荒れを起こす場合があり濃度コントロールを要したり鉄Feなど金属の再付着が起こりキレート剤など添加させたり、薬液の交換頻度の最適化を図ったりしています。HPM(Hydrochloric acid Peroxide Mixture:塩酸過水)金属溶解作用+キレート作用で金属を除去します。また酸化作用があり酸化膜を作ります。HCL汚染やパーティクルの再付着などの問題もあります。プロセスはレジストなどに代表される有機物と装置のロボットなどは金属でできていますから特にFEOLなどの前工程では対になって使われることが多く、ウエットステーションのバス構成もそのような配置になっています。
APMとHPMはそれぞれRCA洗浄のSC-1、SC-2という名で通っていました。RCA社が1970年頃に開発したもので以降、各社で改良されています。ちなみにSC-1、2とはStandard Cleaning solution 1,2という意味です。
DHF(Diluted Hydrofluoric acid :HFとH2Oの混合液)で混合比は 1:10 ~ 1:500 と幅があり色々な工程で使用されます。温度は室温程度が多く酸化膜エッチング作用があります。熱酸化膜を付ける前のクリーンではシリコン表面の自然酸化膜の除去、コンタクト底部のポリマーや自然酸化膜の除去に用いられます。また酸化膜などの上に付着した物質を浮かせて取り除く作用、いわゆるリフトオフによる金属除去、パーティクル除去などにも有効です。しかしむき出しになったシリコン面では表面が活性になっていますからパーティクルや最近はやりのCu再付着などの問題もあり清浄度を保つ手法やリンス条件の最適化、またはHCLや過水の添加などが行われています。BHF(Buffered HF)、BOE(buffered Oxide Etch)、HFとNH4Fの混合液でメーカーにより混合比は異なります。室温で使われ酸化膜の除去、エッチングに使用されます。問題点はDHFと同様ですがシリコン面をエッチングし表面荒れを生じる場合があります。また結晶化し易いこともあり細い配管などでは詰まりも生じます。 H3PO4( Phosphoric acid:燐酸原液85% )、原液で使用し温度は155℃程度です。窒化膜(シリコンナイトライドSiN)をエッチングするためのものです。LOCOS工程でのナイトライマスクの剥離除去やその他のナイトライドのエッチングに使用します。シリコンナイトライド膜は化学的に強くフッ酸でも用意にエッチングされません。155℃程度に加熱された燐酸は強力でこれをエッチングしてしまいます。しかし濃度よりエッチングスピードは変わり、濃度が濃くなると低下し薄くなると逆に上がります。下地はシリコン酸化膜SiO2の場合が多く、これとの選択比も濃度で変わってきますから純水を自動で供給し常に濃度を一定に保つ必要があります。フィルターが詰まりやすいことや廃液は結晶化しやすいなどの問題もあります。IPA(Iso-P Alcohol:イソプロパノールとも言う)はよく乾燥で使用します。IPAを蒸気にして水と置換して乾燥させるIPA Vapor乾燥やマランゴニがあります。

半導体製造プロセスは大きく分けてシリコン面へ素子を作りこむ工程であるF・E・O・L(Front End of Line)とF・E・O・Lで作られた素子の上へ絶縁膜を付けてからコンタクトやバイアと呼ぶ穴を開けて配線を作るB・E・O・L(Back End of Line)に分けられます。F・E・O・Lでは酸系やアンモニアなどの洗浄液が用いられます。材質は基本的にシリコンなので酸やアルカリでも問題はありません。従って洗浄力は強くパーティクルや汚染物質が付着しても容易に洗浄できます。
F・E・O・Lは元々パーティクルの発生は少ないプロセスが多く、熱工程やLP-CVD(減圧CVD)はクリーンなプロセスです。ウエット洗浄も強力な酸系、アルカリ系の洗浄液が使えますのでたとえパーティクルが付着しても比較的容易に除去できます。一方B・E・O・Lは金属配線工程ですから酸やアルカリ洗浄液が使えません。金属膜が溶けてしまいます。更にB・E・O・L工程そのものはパーティクルを発生し易いという欠点もあります。AP-CVD(常圧CVD)はパーティクル発生機だと言う人もいるくらいです。パーティクルを発生し易く、除去し難いためパーティクル管理が歩留を左右します。B・E・O・Lでは有機溶剤系の洗浄液を使うなど色々工夫しています。
図2、3は洗浄バス構成の例ですが、この辺は各社各様でありプロセス対応や実績、経験など色々な要素で決めています。用語の説明ですがQDR(Quick Dump Rinse)オーバーフロー後急速排水しシャワーでウエハをリンスします。SPM、APM、HPM後に温純水で用いられます。OR(Overflow Rinse)オーバーフロー機能だけを有するものでDHF、BHF後に用います。FR(Final Rinse)オーバーフロー機能だけを有するもので純水の比抵抗を測定する機能がありリンス完了の判断をしますので乾燥の直前に位置しています。DRY(乾燥)のことです。S/DはSpin Dryerのことでウエハを高速で回転させて乾燥させますので電気洗濯機の乾燥に似ています。V/DはVapor DryerのことでIPA蒸気中でウエハ表面の水と置換させて乾燥させます。後で述べますウォータマーク対策のためです。配線系でのバス構成中でACTとはUSなどで用いられているアルミ用洗浄液です。現在のデバイスは多層配線になり材質もCuなどが導入されウエット洗浄中に虫食い状に金属をエッチングしてしまうこともあり洗浄液を含む開発はホットなものがあり色々なものが出て来ています。  実際にはこれらに搬送用ロボットなどのインターフェイスが付きます。

図2-ウエットステーションの構成例

図3-BEOLウエットステーション構成例

それではAPMなどの各処理部はどうなっているかという事ですが、図4に概要を載せておきます。バスを中心に書くユーティリティが接続されています。図4では廃液ラインは省略してあります。バス底部にあるMegasonicとは超音波発生装置でありここで強力な振動を作って洗浄効率を上げるものです。かなり効果的ですが使用法を間違えると時にはデバイスを破壊するほど強力なものですので注意が必要です。

図4-バスの構成例

ウォーターマーク(WM)とは
乾燥工程でウェーハ表面に残留または付着した水滴によって生じるしみのようなものです。ベアシリコン表面で水が乾燥する時(直前)に起きると考えられており(1)Siの水への溶解 (2)Siイオンと溶存酸素が反応 (3)反応生成物としてシリコン酸化物が乾燥表面に析出することです(図5)。

Si+H2O+ O2 ⇒ H2SiO4 ⇒ SiO2+ H2O

図5-ウォーターマーク

そこでIPA蒸気中でウエハ表面と蒸気を反応-置換させて防ごうとしたものがV/D Vapor Dryer(図6)です。良い方法ですがウォーターマークをゼロにすることはできません。

図7-ベーパードライ
図6-ベーパードライマランゴニ乾燥法はリンス槽よりウェーハを適当な速度で引き上げながらIPA蒸気を含む窒素ガスを吹き付けて室温で乾燥する方法です。
引き上げウェーハが水面を横切るときにできるメニスカス部(気液界面とのウェーハ面との交差部にできる湾曲面部の水がIPAの溶解によって表面張力が下がり、ウェーハが水に濡れなくなるマランゴ二効果を利用したものでありIPA消費量が少なく、ウォータマークができにくいと言うと特徴があります。ウォーターマークの問題は現在でも完全には解決さてれおらず色々な方式が研究開発中です(図7)。

図6-マランゴニ乾燥

CMPを用いたダマシンCuプロセスの普及などでウエハの縁-ベベル部と裏面洗浄が必須となりました。この点ではバッジ式より枚葉式のほうが有利となります。制御性などでも断然有利に働きます。また大口径時代になりバッジ式では大量の薬液を必要としランニングコストや廃液による環境への配慮を必要となります。ラインが全て300mmやそれ以上のもので置き換わった時には洗浄装置も全て枚葉式になるかもしれません。写真と図8は旧SEZ社の枚葉式洗浄装置ですが薬液をいくつか変えられる方式でプロセス対応性を上げています。

図9-スピンウエット装置(旧SEZ社提供)

ベベル部の洗浄(エッチングを含む)やウエハ裏面の洗浄による汚染防止などウエット装置に求められる性能は益々大きくなってゆきます。大口径化に伴う洗浄用薬液の膨大ナコスト、環境への対応を踏まえていくつかのアイディアが生まれ実用化に向かっています。従来のAPMやHPMに代わる洗浄液の開発では以下のようなものがあります。

図8-べベル部(旧日本SEZ社提供)

オゾン水:従来の過酸化水素(過水:H2O2)の代わりに使用するもので理論的にはH2O2よりも高効率SPMの代替のSOMも機能水を使った洗浄の一種です。オゾン水があれば薬液はHFだけで洗浄は足りるという意見もあるくらいです。
電解イオン水:水を電気的に分解してできる「アノード水」と「カソード水」を洗浄に利用
<アノード水>(陽極H+;酸性) 金属の除去を主な目的に使用される
<カソード水>(陰極OH-;アルカリ性) 主に微粒子の除去に使われる
APM→カソード水、HPM→アノード水、SPM→SOMまたはオゾン水に利用など

超臨界流体洗浄:超臨界状態:ある物質の圧力と温度を加えてゆき、臨界点を超えると液体と気体が共存する状態になり通常とは異なる性質を示します。超臨界流体では粘性が気体の様に小さく表面張力がゼロとなるため超臨界流体中で洗浄・乾燥を行うとダメージ無く微細な構造に対応できるというものです。微細な構造体を作るプロセスでは必須となりMEMSでは一部応用が始まっています(図9)。

図9-表面張力

最後に今後の課題ですがナノレベルのデバイス生産では今までのような検査では汚染を測定し難くなってきます。具体的には電子顕微鏡などでのチェックは困難になり全てはTEG等による電気評価に変わり目に見えないものをクリーンすると言う状況になるかも知れません。ウエット洗浄の重要性は高まると思います。従来のRCA洗浄では洗浄できない材料への取り組み-例えは新材料であるRu,RuO2,Pt(ゲート電極)、Ta2O5,BST,PZT(キャパシタ材料)、Low-K材料への対応などは薬液メーカーとの協力関係も欠かせません。さらに大型化する装置コストやランニングコスト(薬液、純水、エア、電力、廃液処理、他)の問題解決と温暖化対策、その他の環境への配慮が益々求められることでしょう。

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