アナログ回路

装置保全やフィールドサービスエンンジニア方用の、アナログ回路基礎知識で基本的なものです。実習ができるようになっていますので、工業高校、社員教育などにも使えると思います。
幾つかの企業で社員教育をしましたが、実習付の講座は理解度が高かったものです。

1:初めに
ディジタル(論理ICなど)回路に比べ、アナログ回路は取っ付き難いとよく聞きます。アナログ回路の中心となるOPアンプはカラオケのアンプ(増幅器)を連想いただければよいと思います。デジタルは0-1の世界で入出力は全て0か1かで成り立っています。実際には電圧の高い低いで扱いますから、1種の直流の様なものと思ってよいでしょう。一方のアナログは連続信号を扱います、こちらは交流の様なものです。電子回路は皆、直流で動きます。携帯電話、パソコン、TV、ラジオは皆、電子回路で電池(直流)で動作しますね。従って、ディジタル回路は電池-直流から0-1の信号を作り出す回路です。一方のアナログ回路は電池-直流から連続量(交流みたいなもの)を作り出す回路と言うことになります。

図1-ディジタルとアナログの世界

ディジタル回路では、これを動かす為の電源は0,1を電圧のLowやHiに対応させればよいので通常+5V直流(DC)の単一電源です。今どきのデバイスは電源電圧が下がって、3.3Vや2.7Vになってきました。これは半導体設計や製造の都合です。こちらは半導体プロセスで解説していますので、ご興味のある方はご覧ください(現在工事中)。
これに対しアナログ回路は連続信号の交流(AC)信号を扱います。信号はプラスにもマイナスにもなりますから、単一電源ではどちらかしか扱えなくなりますので、通常はプラス、マイナスの両電源が必要となります。古典的には±15VDCですが、現在は電源の自由度が高く、かつ片電源でも作動する種類も多くあります。

図2-デジタルとアナログの電源

半導体製造装置などの回路ではディジタル・アナログ両方を扱いますから、混載回路になっています。従って複数の電源のが用意されています。図3はあるディジタル・アナログ混載基盤のものですが、±15Vのアナログ電源とそのGND、+5Vのディジタル電源とそのGNDが見えています。アナログにとってはディジタル信号の0-1はノイズそのものです。従ってグランドを分けています。両者が干渉し合わないように設計要求されています。

図3-各種グラウンド

2:OPアンプ(オペアンプ 又はオペレーショナルアンプリファイヤー)

アナログ回路の中で中心的な役割を担うデバイスはOPアンプです。オペレーショナルアンプリファイヤーの略で演算増幅器と訳されます。演算とは計算する、の意味です。現在のコンピューターは0-1の2位値で計算するディジタルコンピューターですが、それ以前はアナログコンピューターと言うもので計算していました。原理的にはディジタルコンピューターは-そろばんでアナログコンピューターは-計算尺です。数値を電圧に置き換えて例えば1+1=2を1V+1V=2Vとします。このため加算回路がOPアンプで作られました。何度かアナログコンピュータの実習をしたことがありました。工校では真空管製で、大学ではトランジスタ製でした。今はもう博物館行きですが、微分方程式なども連続解で出力され、中々面白いヤツでした。OPアンプは当初真空管で作られ、次にトランジスタで最後にはIC化されています。安いものでは1個50円位で購入できるようになりました。今ではアナログコンピュターを使う人はいないでしょうから、OPアンプの応用は各種アンプ(増幅器)になっています。OPアンプの記号と各端子の意味を図4に示します。OPアンプは差動入力と言って入力端子は2つで出力が1つ電源はプラスとマイナス用が2つあります。差動とは差を増幅すると言う意味です。図4で非反転入力端子に加えた電圧と反転入力端子に加えた電圧の差を増幅します。入力インピーダンスZinは∞で入力電流は流れ込みません。これは非常に有利で入力側に接続されている回路からエネルギーを奪わない、すなわち影響しないと言うことです。測定回路のセンサー出力は微弱ですからセンサーに影響しない回路が作れます。増幅度Aは∞です。どんな微弱な信号も大きく増幅してくれますが、実際の汎用OPアンプでは5万から10万倍程度です。しかしこれでも相当な増幅度で実用上は増幅度∞と見れます。また出力インピーダンスZoはゼロオームです。電流をいくら取り出しても電圧降下しませんのでロスは0(W)です。理想OPアンプは少し出来過ぎですが各種応用回路の増幅度計算ではこれを用いています。

図4-理想OPアンプ

表1-理想OPアンプ特性

入力端子には反転と非反転がありますが、反転入力端子に加えた入力信号は反転されて出力に現れると言う意味です。例えば増幅度Aが2倍だった場合、+1V加えると出力は-2Vになると言うことです。逆に-1V加えると今度は+2Vが出力されます。今度は非反転入力端子ですが、こちらは反転されず何倍かされて出力されます。この部分はまた具体的な応用回路の所で詳しく解説します。市販されているOPアンプにはDIP(ディップ)タイプとTO CAN(テ-オウカン)タイプがあります。TO CANタイプは突起部が8番ピンになっています。共に切欠きやマークを基準に、上から見て左回りにピン番号を数えます。
このように上から見て左回りにピンナンバーを数えるやり方をトップビュー(Top View)と言います。ICはトップビューでピンナンバーを数えます。

図5-ピンアサイン

ピンは最低、非反転入力端子、反転入力端子、±電源用が2つに出力用端子1つの5つあれば良いのですが、他に機能がある端子を持つOPアンプもあります。多くはオフセット調整用と位相補償キャパシタを取り付けるためのものです。図5の例ではオフセット調整端子(2つ使用)があります。

図6はOPアンプの等価回路の一例で、古典的に有名なμA741はこのタイプです。前段は差動入力回路で後段はアンプ回路になっています。Offsetは差動入力回路のペアになっているトランジスタのばらつきなどで、入力が無いのに出力が現れてしまう場合に、これをキャンセルために用いられます。今回用いるLM358、LM324には有りません。キャパシタCは位相補償用で高周波領域では早い信号の変化に追従できず入出力間に位相のズレが生じ、ポジティブフィードバック回路が形成されてしまいます。結果、発振など不安定になりますので、それを防止するためのものです。反面周波数特性は落ちます。LM301型OPアンプは外付けで用い、設計者が定数を選べばOPアンプの能力を最大限引き出せます。少し高度になりますので、今回は使いません。

図6-OPアンプ内部回路

では実際にOPアンプを使った増幅器を図7で考えてみましょう。OPアンプは元々差動増幅器です。非反転入力端子と反転入力端子に加えた電圧の差を増幅しますので話しを簡単にするため非反転入力端子をグランドにして0Vに落としてしまいます。非反転入力端子に加えた電圧V1が反転増幅されて出力されます。試しに1V加えたら出力は幾らになるでしょうか?増幅度Aが無限なので出力は無限Vになるでしょうか-答えはノーです。電源電圧以上には出力されませんからマイナス電源電圧の-Vまで行って飽和しています。今度は0.0000000・・・1Vのように非常に微小な電圧を加えてみたらどうでしょうか。
増幅度Aは無限ですからやはり出力はマイナス一杯に飽和してしまいます。実際のOPアンプでも5万-10万倍の増幅度がありますから結果は同じになります。これでは増幅器は作れません-暴れ馬みたいなものです。アクセルを1mmでも踏み込んだらエンジン-フルスロットルになる暴走車のようなものです。

図8オープンループ回路

そこで今度は図7のように出力の一部を入力に戻して、見かけの増幅度を押さえ込む作戦にでます。出力の一部が反転入力端子に戻っているところがミソで、もし非反転入力端子に戻してしまうと入力信号と出力信号が同位相で加わりますので、無限に増幅してしまい発振器になっています。OPアンプの応用回路には幾つかの種類がありますが、その多くは出力の一部が反転端子に戻されている、所謂ネガティブフィードバック回路になっています。ネガティブフィードバックは一種の減衰器になっていますので、その減衰度を変えることで増幅度Aをコントロールしています。

図8-クローズドループ回路

3:では応用回路で実習しましょう

これから色々な応用回路を組み立てて行きます。教育やトレーニングで使うなら手頃な値段で扱い易いものがよいでしょう。この講座では電源電圧が比較的自由で位相補償キャパシタが内臓され自己発振し難いLM358とLM324を用いています。LM358はパッケージに2個のOPアンプが入っていてDIP型の8ピン仕様でLM324はDIP型14ピン仕様で4個入っています(図9)。電源は単一電源でも使用できるよう設計されていて便利です。電源は9Vの006P乾電池がよいでしょう。ディジタル回路で用いる穴あきのブレッドボードで回路を組んでも動作しますが、配線を長く引き回わすと動作が不安定になったり発振したりする場合があります。発振を起こすと異常な音がしたりICが発熱したりします。ICを手で触って高温になっていないか、触れた時、正常になったり異常になったりしないかなどをチェックします。手っ取り早いのはディジタルテスターによるイマジナリーショートの確認と、オシロスコープによる波形観察です。

図9-実習用OPアンプ

ブレッドボードに組む場合、下図10を参考にしてください。

図10-ブレッドボード配線例

3-1:反転増幅器

図11は反転増幅回路の例です。入力信号が反転入力端子に加えられ、出力の一部が抵抗R2で反転入力端子に戻されています。増幅度Aは反転回路なのでマイナスR2÷R1倍となり外部抵抗により決定されます。ネガティブフィードバックにより無限倍の増幅度が見かけ上-R2/R1倍に押さえ込まれていると言えます。なぜ外部抵抗R1、R2のみで決まるのかの説明は2つに別れます。1つはバーチャルショート(仮想接地)と言ってネガティブフィードバック回路では2つの入力端子間の電圧はゼロ(V)になり見かけ上ショートしている様に見えることを利用して説明します。もう1つは正攻法で増幅度Aが∞の場合には外部抵抗で増幅度Aが決まると言う解説のし方で、結果としてバーチャルショートが導けます。どちらで行くかは好みの問題でしょうが、一度は正攻法で解いておいた方が良いでしょう。以降、バーチャルショードで説明できます。

図11-反転増幅器

図12の回路で考えます。OPアンプは入力インピーダンスZinが∞(Ω)なので電流がOPアンプに流れ込みません、これが前提になります。従ってi1は外部抵抗R2に流れこみます。これをi2としていますが出力は反転されますので方向は右から左方向です。よってi1+i2=0が成立しなくてはなりません。これらの関係を式を立てて解くと図13式の展開になります。計算途中でV点の電圧が0(v)と計算できます。非反転入力端子はグランドの0(v)ですから見かけ上反転端子はショートと同じ電圧である0(V)となります。

図12-反転増幅器説明

図13-反転増幅器式

実はイナジナリーショートは丁度テコの原理のようなもので、非反転入力端子の電圧である0(V)になるまで反転入力端子が0(V)になるまで出力を戻し続けています。0(V)になって両入力端子間に差が無くなったところでフィードバックは落ち着きます。一方解説の主流であるイマジナリーショートを初めから認めて前提とすると割合簡単です。こちらの説明が多くの本で紹介されています(図14参照)。

図14-イマジナリーショートで説明

図15はLM358を使った反転増幅器のテスト回路です。電源は006P型の9Vを2個使っています。こうすると入力がプラスマイナス信号に対応できます。帰還回路の定数R1、R2は10kΩですので増幅度Aは-1倍になります。

図15-反転増幅器実習回路

入力電圧と出力電圧を電圧計でモニターします。電圧計はテスターのレンジをDC-Vにすればよいでしょう。正しく動作していれば入力の-1倍の電圧が出力に現れるはずです。もしそうなっていなかったら接続を確認します。トラブルの多くは接続不良です。イマジナリーショートを確認するため2番と3番ピン間に電圧計をあててゼロボルトに近い値になっているかチェックします。電源である8番ピンと4番ピンに取り付けてある0.1μFのキャパシターは電源ラインのノイズ除去用です。なるべくピンの近くでグランドに落とすようにしてください。帰還抵抗R2に当たる10KΩの固定抵抗の代わりに可変抵抗器を入れると増幅度Aが変えられます。例では100KΩのB型を使っていますので、最大-10倍まで変えられます。。B型とは回転角と抵抗値が正比例するタイプで電圧調整用に用いられます。オーディオなどの音量コントロールは非直線性のA型やC,D型が用いられますがこれは人間の聴覚特性に合わせたものになっているためです。足は3本出ていますが真ん中が可変電圧を取り出す所で→で示した部分になります。ピン番号は2番です。残りは1番か3番ですが、右周りで抵抗値が上がるか下がるかの違いですので、初めめは気にしなくてもよいと思います。

3-2:非反転増幅器
今度は非反転増幅器の場合です。この回路も出力の一部が反転入力端子(マイナス入力)に戻されているNFB(ネガティブフィードバック)回路になっています。動作中、2つの入力端子はイナジナリーショートになります。出力E2が2つの抵抗R1とR2で分割さてれ反転入力端子に加わります。非反転入力端子とは同電位(イナジナリーショート)になりますので式で表した関係から増幅度AはA=1+R2/R1となります。

図16-非反転増幅器

図17-非反転回路実習

反転増幅回路を少し変更して非反転増幅回路にします(図17)。こんどは3番端子に入力信号を加えいつものように2番端子にフィードバック回路を形成しています。増幅度Aは1+10k/10kで+2倍になります。
可変抵抗器を調整して入力電圧と出力電圧を測定してみてください。ここでもイマジナリーショートを確認します。詳しい説明は省きますが非反転増幅回路は入力インピーダンスZinが反転増幅回路に比べて高くなりノイズに弱いと言う弱点が出やすくなります。
このため実際には余り使用されない傾向にあります。

3-3:作動増幅器

差動増幅器は2つの入力端子に加えた信号の差が増幅されて出力されるものです(図18)。平たく言うと引き算回路ですがOPアンプの中で代表的な使い方と言ってもよいでしょう。通常はR2=R4、R3=R1に定数を選びます。この条件では増幅度Aは下式のようになり非反転入力端子電圧V2-反転入力端子電圧V1にR1/R2倍したものになります。

図18-作動増幅器

差動増幅器のメリットはノイズの除去にあります。ノイズは電子回路の大敵でいかにノイズを除去してきれいな信号を得るかが設計のキーになるところです。一般にノイズはOPアンプの2つの入力に同時に加わります。これを同相(同位相)で加わると言います。ノイズをVnとすると非反転増幅端子に加わる電圧は信号成分のV2+Vn、反転端子の方にはV1+Vnが加わります。すると差動増幅器の増幅度Aは式の中でVnが引き算されて相殺されてしまい出力には現れません。よって差動増幅回路は雑音を取り除く機能があります。センサーからの信号は多くの場合、雑音が付いてきますから初段の増幅回路の所でこのような処理を行っています。どれくらい雑音を取り除けるかはOPアンプの性能の1つとして規定されていて同相除去比CMRR(Common Mode Rejection Ratio)-単位はdBと言います。もちろん高い方が有利です。

図19-作動増幅回路ノイズ除去

実習では差動増幅器は2つの入力の差を増幅しますので、入力信号を2つ用意します。図20の定数では増幅度Aは10になりますのでa点とb点の電圧の差が10倍されて出力に現れるはずです。ここでもイマジナリーショートを確認します。

図20-作動増幅器実習回路

3-4:ユニティゲインバッファー(UGB)

ユニティゲインバッファーは出力の100%を入力に戻す回路です。100%戻してしまいますから増幅度Aは1です。増幅しないのなら何のメリットがあるかと言いますと、一つは入力インピーダンスZinが無限近くになります。よって前段の回路から電流が流れ込みません。言い換えると前段の回路から電流を奪って影響を与えないと言うことです。例えば針式のテスター(アナログテスター)は針を振らせるために回路から電流を取っています。アナログのメーターは一種のモーターの様な構造ですからエネルギーが必要な訳です。そうすると電流を奪われた回路の動作は不安定になったり変ってしまったりします。このようなことが無いように高入力インピーダンスにして防いでいます。また出力インピーダンスZoutはゼロ(Ω)に近くなります。こうすると次段の回路へロス無く信号を渡せます。これらの動作はアイソレーションと言って前後の回路を分離する働きがあります。ただし高インピーダンス入力はノイズを受け易くなるという欠点もあります。

図21-ユニティゲインバッファー

図22-UGB実習回路

出力から入力に100%フィードバックさせると増幅度A=1倍のユニティゲインバッファーと言う回路になります。ユニティゲインとは増幅度が1と言う意味ですがバッファーとなっている所がミソです。なぜこんな回路にするかと言うと入力インピーダンスZinが無限大になり出力インピーダンスZoutがゼロに近くなり理想OPアンプに近づきます。入力インピーダンスZinが無限大ですから前段の回路から電流が流れ込みません。逆に言うと前段の回路から電流を奪いませんので影響を及ぼさないことになります。前段の回路と後段の回路を切り離して緩衝器(バッファー)として働きますのでこの名前があります。ただし100%負帰還回路ですから発振し易く、応答速度は遅くなります。位相補償キャパシタCが外付けタイプのものでは周波数特性グラフを見て計算し必ず取り付けます。

3-5:コンパレータ(比較器)

コンパレーターは日本語で比較器です。2つの入力端子の電圧を比べてどちらが大きいかを比較します。非反転入力端子の方が大きければ出力はプラスの電源電圧に近い値までフルスイイングされます。反転入力端子の方が大きければマイナス電源電圧近くまで出力されます。結局、出力がプラス最大かマイナス最大かだけ見ていればどちらの端子に加わった電圧の方が大きいかが分かります。これはOPアンプの増幅度Aがとてつもなく大きいことを利用しています。回路を見てすぐ分かることはネガティブフィードバック回路が無いことです。OPアンプは元々差動入力回路になっていますから両方の差を増幅します。差が少しでもあればそれを無限倍に増幅し出力しますからたちまち電源電圧近くまで持ち上がります。もう一つ、オープンループですのでイマジナリーショートはありません。トラブルシューティングなどではこの点注意してください。

図23-コンパテータ(比較器)

図24-コンンパレータ実習回路

差動増幅回路を少し変更してコンパレータにします。フィードバック回路を外してオープンループにしてしましましょう。図24でピン番号1番の出力が+9VDCならa点の電圧>b点の電圧です。逆に-9VDCならa点の電圧<b点の電圧です。電圧計の代わりにLEDを取り付けてインジケータとしても良いでしょう。LED1が点灯すればb点の電圧の方が、LED2が点灯すればa点の電圧の方が高いことになります。

フィードバック回路が無いのでイマジナリーショートは成り立っていないことを確認してください。

3-6:ウインドウコンパレータ

コンパレータの変形型です。ウインドウとは窓と言う意味で、入力がある範囲に入っているときに出力されるものです。ウインドウコンパレータは図25のように2つのコンパレータを組み合わせています。コンパレーの知識を持って、じっくり考えると分かってきます。

図25-ウインドウコンパレータ

図25の例でみるとOP1の非反転入力とOP2の反転入力が共通で接続されています。VLはウインドウの下限、VHは上限を与える閾値電圧です。入力V1がVH>V1>VLの時だけ出力はプラスV最大になります。その他の条件では出力はマイナスV最大です。 ここでダイオードDは2つのOPアンプ同士の出力がかちあわないようにするための部品でOPアンプの種類によっては無くても大丈夫です。念のため入れました。V1がVLより低い場合にがOP1の出力がマイナス最大になります。よってダイオードD1は道通してVOはマイナス最大になります。V1がVHより高い場合にはOP2出力がマイナス最大になりD2が道通してやはり出力VOはマイナス最大になります。V1がVLとVHの間に入るとOP1出力はプラス、OP2出力もプラスになりD1、D2は不道通になるため電圧Vが抵抗Rを通して供給され出力VOはプラス最大になります。Rはプルアップ抵抗と言います。以前ウンドウコンパレータは精度を必要としないオン-オフ制御などに用いられました(自動制御の章で出ています)。

LM356はパッケージに2個のOPアンプが内蔵されていますのでウインドウコンパレータに最適です。図26ではV1がVHとVLの間にある間出力が+9VになりLEDが消え他の場合には点灯します。

図26-ウインドウコンパレータ実習回路

3-7:積分増幅器

積分増幅器は一昔前のPID自動制御コントローラに付いていました。今は、ディジタル制御の時代です。応用例は余り無いとは思いますが、何かの役に立つかも知れません。

積分回路は反転増幅回路のR2がキャパシタCで置き換えたものになっています(図27)。ネガティブフィードバック回路なのでバーチャルショートが成りたつとして進めます。

図28-積分増幅器

図27積分
積分とは=足し算のことです。加えられた電圧E1を時間tと共にキャパシタCに溜め込んで足して行くイメージです。見方を変えればある時間tまでの平均電圧とも言えます。これを利用して自動制御などでは積分制御と言って小さなオフセット電圧(誤差)を足し込んで大きな信号にして出力しオフセットをゼロにしています。

ところで実際の回路ではキャパシタCに並列に抵抗rが付く場合が多くあります。これは周波数fの低域での増幅度Aの増加を抑えるためです。キャパスタCのリアクタンスXcは

Xc=1/ωC=1/2×π×f×C (Ω) です。

周波数fの低い領域 f <<1/2×π×R×C では A=r/R となります。
周波数fの高い領域 f >>1/2×π×R×C では
図28-2積分
となり本来の積分器として働きます。

図28-積分増幅器実習回路

積分回路の実験回路は図28のようにして出来上がります。積分用キャパシタCの0.01μFに並列にr=100KΩの抵抗が取り付けられています。低域での増幅度が上がるのを防止しています。究極の低域(低周波)は周波数f=0の直流ですから、直流入力に対しての増幅度AはA=-10倍になります。実際の実験では交流信号源としてファンクションジェネレータなどが必要で更に出力のモニターにはオシロスコープが必要です。工業高校や企業なら機材は揃っているでしょうが一般には無理でしょう。そこで今では何処にでもあるパソコンを使ってみることにしましょう。信号はなるべく規則性のある単純なものをダウンロードしてきましょう。それを外部スピカー端子から取り出して積分回路の入力とします。積分回路の出力をパソコンのマイク入力に接続し録音モードにして波形観測として利用します。

3-8:微分増幅器微分回路は反転増幅回路のR1がキャパシタCで置き換えたものになっています。これもネガティブフィードバック回路なのでバーチャルショートが成りたちます。

図29-微分増幅器

図30微分
微分とは=引き算のことです。加えられた電圧E1の時間的変化分を出力します。前回電圧E1から今回電圧E2を引き算して求めているイメージです。変化分が無い場合には出力はゼロになります。自動制御では微分制御と言って外乱など緊急を要する制御用に大きな出力を要する場合に用いられます。実際の回路ではキャパシタCに直列に抵抗rが付く場合が多くあります。これは周波数fの高域での増幅度Aの増加を抑えるためです。キャパスタCのリアクタンスXcは
Xc=1/ωC=1/2×π×f×C (Ω)
周波数fの高い領域 f >>1/2×π×R×C では

図32微分
周波数fの低い領域  f <<1/2×π×R×C では
図33微分
となり本来の微分器として働きます。

実習で微分回路は積分回路のキャパシタ-と抵抗を入れ替えて作ります。キャパシターと直列に抵抗rの10kΩが入っていますが高域での増幅度が上がってしまうのを防止するためです。入出力の波形観測にはパソコンのオーディオ端子を利用します。

図30-微分増幅器実習回路

3-9:乗算増幅器

掛け算回路は簡単にできます。図31の反転増幅回路では式1に示すようにR2/R1比で増幅度Aが決まります。ここでR1の値を式2のように電圧Vmでコントロールできれば出力はVi×Vmの掛け算なります。あとはVmを小さくするとR1が大きくなるような素子を見つければよいだけです。このような特性の素子にはFETがありますので回路を書き換えますと図32になります。これには市販のFETですぐ実現できます。
図35乗算

図31-乗算増幅器原理

図32-乗算増幅器

3-10:除算増幅器

割り算回路は同じような考え方で、負帰還用の抵抗R2を電圧Vdで制御することで実現できます。これに応用できる素子はFETやCdsフォトカプラなどがあります。

図33-除算増幅器原理

図38除算

3-11:乗算・除算増幅器

OPアンプを2個使って乗算と除算を一度に行える回路ができます。
図40乗算除算

図34-乗算除算増幅器

3-12:発振器

今までの回路は全て(コンパレータを除き)ネガティブフィードバック回路で構成されています。出力の一部は必ず反転入力端子に戻されました。しかし非反転入力端子に戻せば発振器になります。図35では一般的な発振器の回路を示します。R1、R2、R3を1M(Ω)、Cを1(μF)にすると約1Hz、ディユーティー比50%-50%の矩形波が作れます。テスターやLED点灯(ON-OFF的)でも何とか追いかけられますので一度試しては如何でしょうか。また出力の矩形波を3-7で紹介した積分増幅回路に入れると三角波を作れます。こちらはゆっくり変化しますから、LEDがだんだん明るくなったり、暗くなって行きます(アナログ的)。

図35-発振器

4: 動作確認・トラブルシューティング

アナログ回路はディジタルと違って連続量を扱うので難しい場合が多いのですが、簡単にチェックできる方法もあります。正常動作中では反転入力端子と非反転入力端子間に電圧は現れません。これをイマジナリーショート(仮想接地)と言います。テスターで両端の電圧をチェックしてください、殆どゼロボルトのはずです。電圧が現れる場合には何らかのトラブルが生じています。ただしイマジナリーショートが現れない場合が2つありますので注意してください。1つはオープンループで用いるコンパレータの場合、2つ目は出力が何かの具合で飽和している場合です。私はこれで水を被った圧力コントローラ基板を修理した経験があります。トータル8個のOPアンプをイマジナリーショート確認だけで交換し見事修理できました。簡単ですのでお勧めします。

図36-チェック法

5:センサーインターフェイス

センサーには様々あり温度、圧力、流量など扱いますがブリッジ回路の中に組み込まれている場合があります。ブリッジ回路は4つの素子を図37、38のように4辺に配置したもので対角線上の2つの端子に交流や直流を加え(これを変調信号と言う)もう一つの組から信号を取り出しています。ブリッジ回路にする理由はノイズ対策です。ブリッジ回路から取り出された信号を差動増幅回路に入りますが、ここでもノイズを除去します。このようにセンサー周辺は一般にノイズがありますから回路では色々工夫してノイズを除去しています。今はコンピューター全盛期ですからアナログ信号はA/Dコンバータでディジタル信号に変換されてプログラムにより処理されます。

図37-センサーインターファイス

図37-ブリッジ回路

6:ディジタル&アナログ実習
ディジタル回路のようにブレッドボードで組んでもよいのですが、発振の懸念がありますのでピンを使った専用基板を作っておくと便利です。抵抗やキャパシタなどのパーツを穴に差し込んで回路を作ります。写真はLM358が2個載った両電源、片電源仕様の基盤です。
外付け部品を組み替えて、反転、非反転、ユニティゲインバッファー、コンパレータ、発振回路の実験ができます。

実験用基板試作

基盤にはLED、可変抵抗器やトランジスターが載っていて表示や電圧の調整に使っています。写真手前左側が電源ライン(+、G、-)、右側は表示用LEDとその駆動用PNP、NPNトランジスターです。

基板近景

******** おまけ *********************

OPアンプとは直接関係無いのですが、社員教育で使っていました実習回路をご紹介して終わりにしたいと思います。
ADコンバータはPICやAVRなどのマイコンにも搭載されていて、ディスクリート部品でお目にかかることは少なくなりました。データもシリアル転送で出てきますので、イメージがつかみ難いものです。この実習器はパラレルデータで入出力されますので、DIPスイッチで入力やLEDで表示でき、一目で変換の様子が確認できます。左側がAD変換器で右側がDA変換器です。AD577の出力15番ピンからADC0803の入力6番ピンに接続して実験します。共に8ビットで扱い易くデバイスも安く手に入ります。
図46AD実習器

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